立体的な僕らは、平面的な言葉を吐き散らす。
それでは形が無くて寂しいから、僕は手紙に書き連ねる。



手紙を書くよ





元気でいますか?





一番最初の出だしは、これが正しい。
そして、俺はいつだって元気だ。

例えば全国区のダブルス、ジミーズが今回の選抜に選ばれてないとしてもだ。



選出基準は全く分からない。
其れは、あくまで「個人」としての資質だけを見たのだろうか?

もしそうなのだとしたら、俺はとても見くびられてる気がしていた。



「ウォンバイ!不動峰神尾!」

そう、確かに、何処かで油断をした。

エースなんて、名前だけなんじゃないだろうか?
確実に勝利を収める南と東方を、直視できるか?
勝ち星なんて、俺のほうが断然少ないのだ。
個人としてなら、確かに上かもしれない。けれど、ダブルスは二人だ。個人ではない。
それでも、個人の能力を見るというなら。

ならば、その名に恥じないように、強くなろうと決めた。

その直後、都合よく、この話(Jr選抜)は来た。





俺は何とか頑張ってます。や、本当。
別に南がフォローに走らなくても、室町くんが構ってくんなくても、新渡米と喜多の奇天烈さを拝めなくても、東方のお母さんぶりに触れられなくてもね。
俺ってば、ダイブ強くなったよ。
そっちは如何なんだろう?全国の為にちゃんと頑張ってるわけ?
誰かが運だと言ったって、其れは結果なんだ。だから下向くなよ〜☆





「何やってんすか?千石さん」
「ん〜?俺が居なくてしゃっきりしないだろう、愛すべきおばかさんたちに、キヨから愛をつづってんのさ!」
「へ〜?」
「こうさ、アナログな方法も偶にはいいね!何てったって、今日のラッキーアイテムだしね!」
「俺も橘さんに書こうかな・・・」
「便箋と封筒ならわけたげるよ?」
ほいっと出した便箋と封筒に、神尾君は一瞥くれながらも、

きゅるる〜

「えへへ!早くご飯行きましょうよ!」
悲しいかな若者の性。食欲には勝てなかった。



神尾君にああいったけど。本当はね、青い空に一人ぼっちで、寂しかったのは俺なんだ。





俺はなんかよくわからないうちに、Jr.選抜が急に召集されて選抜されてる途中だけど、なんか、頑張ってる。
ちょっとビックリ。自分でもね。





皆と仲良くご飯を食べる。誰が言い出したのかは知らないけど。皆そろって食べなきゃいけない。
ご飯の味はよくわからないけど。

美味しいのかな?如何なんだろう?



「英二、ご飯粒付いてるよ?」
「ほぇ?!どこどこ?」
顔を触って一生懸命とろうとしてる菊丸君のほっぺた。
「ここ。」
さらっと取って食べさせる大石君が、

「ほれ。千石、お前こぼしすぎ、顔に付いたのくらい気にしろ」
と、汚れを取ってくれる南に見えて、口に入れたつもりだったご飯を、

「あ、千石さん勿体無い・・・」
桃城君に悲しい顔をされつつ落としてしまった。

「あーめんごめんご!なんか考え事しちゃったよ!一瞬」

悲しくなってきそうだったので、早目にご飯を食べて、部屋に戻る事にした。










「せんごくせんぱい、コレ、南部長名義で、渡されましたです!」

「え?」

渡されたのは薄っぺらい封筒。ただひとつ。
差し入れにしては気の利かないサイズなので、食べ物ではない。

「じゃあ、ちゃんと渡しましたです!僕はこれで失礼しますです!」
「うん、ありがとう、檀君」

いいこいいこと頭を撫でてあげれば、えへへと笑い、もと来た道を戻っていった。



部屋に入りながら封をあけた。
なんとも可愛げの無いレポート用紙が、一枚二つに折られて入っていた。










あほせんごくへ。

俺たちが居ないからって、お前だれてねぇだろうな?
俺達は、つっこみどころ満載のお前が居なくて、若干の物足りなさと、素晴らしき充足に笑顔がたえないよ。

元気でやってこい。
お前は強いんだ。
胸張って、運だけじゃないお前の強さを見せて来い。
寂しくても我慢しやがれ。

その後には、嫌って程一緒に居るんだ。うんざりだな。よもや。
お前が帰ってくる頃には、こっちも全国に向けて最後の大詰めだ。

お前が戻って、それで俺達は山吹の代表だ。
忘れんな。お前が今何処に居たって、俺達の仲間だ。

一日だって、お前が俺達の仲間じゃない日は無い。



唯一の同校だ。太一をちゃんとフォローしてやれよ。

南健太郎部長様。



ちゃんと待ってます。多分。室町

今日も芽は元気だぞ。帰ってくる頃には咲くかもしれない。稲

にとべさんはの芽が、最近とても良い色ですよ!きた










同室の神尾君が帰ってない事を確認した。

食べ終わったら、いぶくん?とやらの所に行くので、すぐには戻らないと言っていた事を思い出した。
都合が善いと想った。
全て俺に都合よく出来てると想った。



だから俺は、声を殺す事なんて、しなくてもいいのだ。

「あは、あはははは・・・!」



とてもとても、苦しかった。
とてもじゃないけど言葉に成らなかったせいか、ぼろぼろぼろぼろと涙が毀れた。
胸に詰まったとげは、それでも俺の一部である事を示唆する様に。痛くて苦しく、どれだけ優しいのだろう?
傍に居る事を思い出させるように、疼く、甘苦しい棘。



我慢なんて、する必要が無いのだ。
何も我慢なんてしなくて善いのだ。そしてぐしゃりと、手紙は手の中でつぶれた。


どうにか泣き止んで、でもどうやって泣き止んだのかは思い出せないけれど、握りつぶしてしまった手紙を見た。

どれだけ久しぶりに泣いたのか。そもそも自分は泣き方を覚えていたのか。
へへへとぐずぐずした顔のまま、皺を伸ばして、ちょっとでも元の状態に、いとおしくて撫でながら、元に戻した。 しわしわのその手紙は持ってきてたマンガに挟んどいた。

いつかまた其れを見つけたら、俺はやっぱり苦しくなるんだと想う。
へらへら笑いながらぼろぼろ泣くのかもしれない。


俺をちゃんと知ってる奴が居てくれて、其れは下手すると家族より大事で、俺なんかに優しくて、なんだろう?
俺の全てを待っててくれてる。
俺が醜いの知ってるのに、待っててくれる。


嬉しくて嬉しくて、あまりにも嬉しくて苦しい。


南、みなみ、ありがとう、ありがとうね?

こんな俺を、見捨てないでくれてありがとうね?

俺の為に、慣れない手紙なんて書いてくれてありがとうね?



そうだ、俺は、あの手紙を締めくくらなきゃいけないんだ。
ほんの少し書き足した足りない言葉。





大丈夫。
俺はちゃんと、忘れてない。

俺は、皆と、全国に行くよ。
だからそのために、今俺の前にあるもの全て、戦って勝ってくる。

待っててよね!

きよすみより。





大丈夫、だから、待ってて。


















































20040818