あの空と、太陽に誓う。
いつか何処かで別つ日が訪れたとしても。

晴れ渡る空の日に
必ず

貴方に・・・





いま、あいにいきます。





「寒・・・」
高級そうな皮のコートの下は、真っ白の少し大きめのセーター。シンプルな細身のジーンズ。とても軽装。
そして、正面から抱きつくように樺地崇弘の懐で暖をとる人は、跡部景吾その人。

「そんな薄着だから・・・」
「楽でいいんだよ、楽で」
「フリルのは・・・?そういえば 最近 ずっと着てない」
「あいつらに受けたからもう二度と着ねぇ・・・」
「変で 似合ってたのに」
「変?!」

たわいない言葉、他愛無い行動。

「寒いね」
「暖房はつけないぞ。」
「うん、いらない」

「寒いね」
「俺で暖を取ればいい」
「跡部さんの方が、冷たい」

「じゃあ、ちゃんと抱きしめておけばいいだろう」



自分の、腕の力が少し強くなった。

「・・・ねぇ 跡部さん、」
「あぁん?」
「もし、いつか離れてもね、」
「はなれねぇ。」
「え?」
「俺達は離れない。運命だって其れが死だって、俺たちを引き剥がせねぇ。そうだろう?」
「うん・・・。」
「それでももし、どうにも為らないときは、俺がお前を迎えに行ってやるから其処を動くな。」

























++++++++++

新年を祝うほんの少し前、遠縁の親戚が亡くなった。
それは遠縁の俺にも優しい人だった。
だからといって涙は出る事もなく、ただ、ああ、死んでしまうとはこういうことなのかと、漠然と思っていた。





新年が明けて、部活の面々から年賀状が届き、俺も書き忘れてた人に送る。
喪に服す事も無いので、新年の幕開けはいたって普通だった。

そう、いたって普通だったのだ。

だからそう、例えば今、大切なあの人や、俺 が此処から消えても、あの人も、俺も、年賀状は出せてしまうのだ。
喪に服す己を、この挨拶状は許してくれない。

そう考えたら、酷く悲しくなって、涙が出てしまった。



「おにいちゃん、どうしたの?ぶつけたの・・・?」
俺の涙を見てしまった小さな妹は、さも自分が痛いような顔をして俺の顔を覗き込む。
「大丈夫。なんでもないよ」
そう言っても妹は俺からすぐに離れる事も無く、足にまとわり付いて危なかったからと抱き上げられて俺と同じ目線になった彼女は、痛くないよ?と、しきりに俺の頭を撫で続けた。
「そうだな、もう、痛くないよ」

そうは言っても、自分の考えた馬鹿な事が、しきりに胸を痛めていた。

「心配、するな」
そう言うと、突然おりると妹が駄々をこねたので、わかったから暴れるなと降ろした。
まだ治らない心の痛み。引きずって、俺は自分の部屋へと戻った。










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郵便受けを見に行こうと外へ出た。

「よぅ、樺地」

「あけまして・・・おめでとう ございま・・・す・・・?」
「疑問系かよ」
「いえ、そんな、いや、なんで・・・?」
「呼ばれた。」
「は?」
「お前の妹が、新年早々電話してきて、日付指定で今日来いって。」
「あいつ・・・」
「おにいちゃんが痛そうなので、けいごおにいちゃんなおしてあげて?って。可愛かったから怒んなよ?」
「どうして番号・・・」
「お前、電話機の前に去年の部活の連絡網張りっぱなしだろう?」
「あ・・・」
「とりあえず寒いから中に入れろよ。立ち話もなんだろう?」
「あ、そうですね・・・はい、どうぞ」



玄関から自分の部屋へは少し遠い。

だから必然的。跡部さんは自分に寄り添う。
「樺地さみぃ」
笑いながら、ひっついて、楽しそう。



「で?」
「は?」
「何があった?」
「何があったんですかね」
「あーん?お前、俺に無駄足させたいのかよ。」
「いえ、そんなつもりは・・・」
「んー?ほら、いっちまえよ。何があって泣いた?」

「何も無いですよ。」

長い廊下を渡り終えて、俺の部屋に着いた。

「何も無いから、泣けたんです。」
言って、部屋の扉を開ける。
当たり前の様に跡部さんが中に入った。





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たった一言のそれ。

其れで分かるとは思わないけど。
聡い人だから、もしかしたら解ってくれるかもしれない。

その証拠に、跡部さんは、部屋に置いてあるストーブの電源は入れずにいた。
コートを脱いで、俺に抱きつく。

俺は少し、ほっとした。

「親戚が亡くなったんです。遠縁の」
「知ってる。」
「皆から年賀状が来るんです。俺も、普通に送れます。それだけです。」

「・・・」

「話、見えますか?」
「大体な。」

「気持ち、見えますか?」
「喪に服したいなら服してくれていい。俺は間違いなく服す。」
「脅迫状みたいに皆から年賀状が来て、自分も送れるのに?」
「本人の気持ち次第だろう?」
「そうかもしれません。」
「それでも寂しいだろうから、だったら。」
「だったら?」

「たった一人、俺はお前に、お前は俺に、年賀状を送ればいいさ。出して出して、出し続けて、返って来ない年賀状を、少しだけ笑って待ってればいいさ。」
「他の人からのは?」
「見えないフリでもしておけばいいんじゃないか?大事なようなら電話もあんだし。」
「跡部さん。」
「あん?」
「ありがとうございます。」
「別に。あ、樺地。」
「はい?」
「寂しく無いように、何だったらうちの籍に入るか?それとも俺がお前の籍に入ってやろうか?」

声を立てて笑う。
優しい貴方。



「そしたら、一緒の墓にも入れるし、堂々と喪に服す事だってできんだぞ?」
「考えておきます」

嬉しくて泣きそうだとは、言わないでおこうと思った。










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「寒・・・」
高級そうな皮のコートの下は、真っ白の少し大きめのセーター。シンプルな細身のジーンズ。とても軽装。
そして、正面から抱きつくように樺地崇弘の懐で暖をとる人は、跡部景吾その人。

「そんな薄着だから・・・」
「楽でいいんだよ、楽で」
「フリルのは・・・?そういえば 最近 ずっと着てない」
「あいつらに受けたからもう二度と着ねぇ・・・」
「変で 似合ってたのに」
「変?!」

たわいない言葉、他愛無い行動。

「寒いね」
「暖房はつけないぞ。」
「うん、いらない」

「寒いね」
「俺で暖を取ればいい」
「跡部さんの方が、冷たい」

「じゃあ、ちゃんと抱きしめておけばいいだろう」



自分の、腕の力が少し強くなった。

「・・・ねぇ 跡部さん、」
「あぁん?」
「もし、いつか離れてもね、」
「はなれねぇ。」
「え?」
「俺達は離れない。運命だって其れが死だって、俺たちを引き剥がせねぇ。そうだろう?」
「うん・・・。」
「それでももし、どうにも為らないときは、俺がお前を迎えに行ってやるから其処を動くな。」



やっぱり、跡部さんは跡部さんだと思った。





「どんな事があったって、お前の誕生日は祝ってやる。だから其処を動かずに俺を待ってろ。誕生日おめでとう、樺地」



プレゼントは俺からのキス一つとさっきの説教で十分だろう?
そんな事を言いながら、優しいキスを一つ。










これからもずっと、もっとちゃんと強く抱いて、貴方を一生放さないように。

例えばいつか、それでもはぐれてしまっても。








































いま、会いに行きます

いま、愛に行きます

いま、愛に生きます

いま、愛に逝きます



いま、会いに逝きます。





大丈夫、貴方が、来てくれます。



















































20050113