太陽に目が眩んでも、その手を、放さないで





never let go



「樺地」

白い壁・四角い硝子で遮られた向こう側から、音の無い声が聞こえた。
其れは、けして此方の応答を期待したものではない声だった。
そのくせ、酷く悲しみを綴った声だった。



「樺地・・・」

それは薄曇の日の事で、学年の違う二人の、滅多にはない逢瀬の時間でもあった。
白の中、切り取られた四角の中で、ぼんやりと外を見る跡部景吾と、眩しそうに中を見る樺地崇弘。



跡部は樺地を見つけているか?
樺地は跡部を見つめているか?

あからさまに出来ない恋路は、だから何より強く二人を繋げていた。
強く繋がっていると、信じていたいのかもしれなかった。
たとえば。

例えばだ。

いつか二人の感情を間違いだったと言われたら、自分たちはどうするだろうか?
感情を捻じ曲げてでもそばにいるか、二人で何処かへ逃げてしまうか?

どうして自分たちは祝福されない途を見付けてしまったのか?
いつだってよぎる不安を、どうしたらよいのか。わからないまま、伸ばした手を触れ合わせ続けていた。
二人の触れた手は、繋がった心は、既に少年の戯れで許容(ゆる)される範囲を超えてしまっているのだ。





眩しそうに中を見ていた樺地が、陰を遮るように手を空にかざした。

ぼんやりと外を見ていた跡部が、窓を開けるために窓に手を触れた。

二人が、お互いの存在を見つけているのかなんて、今更なのだ。



確かに、二人は、互いの手を、いつだって、感じ取って繋ぎたがっているのだ。

この手は、そう、離すことなどできないと知っているかのように。





「樺地・・・」

白い壁・四角い硝子で遮られた向こう側から、音の無い声が聞こえた。
其れは、けして此方の応答を期待したものではない声だった。
そのくせ、酷く悲しみを綴った声だった。
気づかれないと分かっているのに、期待をした声だった。



「×××」



樺地の言葉は、誰にも伝わらない。
ただ、跡部景吾その人にだけ、応えたられたらそれでよい、決意を秘めた言葉だった。





二人が交わす音のない会話は、それでも、たどたどしくも繋げていこうとする二人の奇跡なのだ。



















































20051212