|
それは確かに それは美しく 鳥籠の中の、華
いつだったか、雛を拾った。 その日はいつも傍に居る跡部さんも、いつだって騒がしい鳳も居ない日で、二人並んで歩いていても、特に間に困ることも無く帰っていた。 不意に立ち止まったのは樺地が先だった。 木の根元に雛が一羽。 近くの子供たちに巣を荒らされたのか、はたまた病気で巣から落とされたのか。 どちらにしても、雛は育てられることも無く、このまま死を待つばかりだったのだ。 樺地はしかし、その雛をそっと抱えて連れ帰った。 「樺地・・・」 「せめて、傍に居てやりたいんだ」 ため息をひとつ、勝手にしろと吐いた。 二日後、あの小さな生き物は、短い生涯を必死で終え、そして俺たちは土へと返してやった。 --- 何となく情がうつってしまっていた俺は、たった二日間だけだったが、帰りに樺地の家に寄った。 家に寄ったからといっても特にすることもなく、甲斐甲斐しく雛の世話をする樺地を、ただぼんやりと見ていた。 「おい、そいつが大きくなったらどうするんだ?」 人の匂いがついた獣が、野生に戻れないという知識くらいは持ってた俺は、ふと樺地に訊いた。 「最期まで、責任を持つ」 たったそれだけの会話。 愛されてる雛は、すでに樺地に懐いていた。 雛はすでに、樺地無しでは生きていけない。 (もっとも、樺地じゃなくとも構わないが) 鳥籠の中の雛は、もう二度と、その籠の中から出る日はないのだと、ぼんやりした意識で思った。 「なぁ樺地、跡部さんは・・・」 俺の言わんとしてることが分かってるのか、珍しくふっと笑った樺地の顔から、しばらく眼がそらせなかった。 愛して愛して、ぬるま湯のような愛で育てて、いつか、鳥籠に自らおさまる日を 「最期まで、責任を持つ」 「そうか。」 --- 樺地の家の花壇。ざくざくと掘って、雛を埋めた。 たった数日一緒に居ただけの俺は、それでも悲しみにとらわれた。 隣には、静かに涙を流す樺地。 たった二日間だったというのに。 樺地はその間に惜しみない愛を雛に与え、今こうして涙を流している。 「日吉、樺地」 不意に聞こえた声は、 「お疲れさん。雛も、お前たちも」 樺地の妹に呼ばれたらしい、跡部さんのものだった。 「もっと何かしてやれたかもしれません・・・」 後悔しか沸いてない俺たちに、ふっと微笑む跡部さんは、酷く美しかった。 「何も知らずに一人で逝くかもしれなかったこの雛は、愛されることを知ることが出来た。誰かの傍に居られた。それだけでも幸せだったんじゃないか?」 ぽつりぽつりと泣く俺たちの、肩をずっと抱きしめてくれていたこの人は、樺地が大切に思うほど美しく優しい人なんだと、今更思い出した。 出来れば、樺地の鳥籠に、この人がおさまってくれればいいのにと、 空へ還った雛に、願った。 20070808 |