美しいのは、君のほう



幼い記憶。あれはいつで、どこだっただろう。
さらさらと風が流れる、美しい季節に、俺と樺地と今と変わらず、二人で幸せな日々を生きていた頃の話だ。

「けいごくん、さくら、ついてて、きれい」
そうやって、樺地はゆるく笑う。
「お前にも、ついてる」
二人で笑う。
「さくら、きれい」
「きれいだな」

「だから、けいごくんは、いつもより、ずっときれいなんだ」
一人納得して満足そうな樺地は、にこにこと笑っていた。
言われた俺はどうしていいのか分からず、嬉しくて仕方なかったのに、何バカなことを言ってるんだと、そっぽを向いた。

よく考えなくても、それは殺し文句だって、お前今でも気づいてないだろう?



あれから何年も経った今。
今年も桜は見事に咲いている。
相変わらず綺麗で、壮大で、儚げで、強かだ。

あれから何年も経った今。
今年も桜は見事に咲いている。
相変わらず二人で、幸せで、優しくて、穏やかだ。

隣の樺地は、この春はいつもよりずっと忙しく、いつもよりずっと緊張を強いられていた。
だからだろう、今は夢と現の間でぼんやりとしていた。
もとから二人で居る事に意味があったのだ。今さら会話がなくても困ったりはしない。
樺地のそばに俺が居て、俺の隣に樺地がいればそれでいい。
一緒にいられる限られた時間を、穏やかな空間の中、幸せな気持ちで一緒にいる。それはなんと贅沢な事だろうと思う。

「ああ、樺地、頭に桜がついてる。」
「・・・う、す・・・?」

寝ぼけた表情で俺に答えた樺地の、この容赦ない可愛さはなんだろうか?
眠いなら寝てても構わないと言った。
「おやすみなさい、あとべさん・・・」
安心したように、すぐにすぅっと眠った樺地の上に、後から後から、桜の花びらは降り注がれていく。

桜の花びらは、はらはらと舞い続ける。
そしていつか樺地が美しいと言った俺になる。

-けいごくん、さくら、ついてて、きれい-
あの日俺と一緒に遊んでいた樺地と、今、俺の横できっと幸せな夢を見ている樺地と、そのゆるくほほえむ顔は、変わらない。

あぁ、なんと愛しいのだろう





触れるだけの戯れの本気のキスは、きっと桜が、ごまかしてくれるだろう。



















































20080316