居場所





俺は自分のことを分かってるつもりだ。

人の間で生きて、自分の役割も分かってるつもりだ。

だから、今は、今の自分のこの位置をいたく気に入っている。










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「もう立ち直ったのか」
「やぁ跡部」

日傘を差しながらマネージャー業。傍らには眠りの慈郎。
榊監督の視線は怖くない。
テニス部部員の視線も痛くない。

「立ち直ったって言うか、いつも通りいたって普通だよ」
あ、岳人スタミナ不足みたい。息が上がってる。
あ、鳳調子いいみたいだね、球速がいつもより出てるのに、コントロールも上々だ。

なんていいながらノートとにらめっこ。
跡部のことなんて知らないふり。
そんな俺に、腕組みしたままだった跡部から、
「おい萩之介」
「何?部長」
「あとで買出しに行って来い。メモは書いておく。供に日吉あたりをつれてけ。」
「はいはい、人使いの荒い部長ですね、慈郎」
「あとべはぁ、けっこういつでもあらいC〜」

むにゃむにゃ言いながらも返事を返す慈郎が、たまらなく愛しい。
ぽわぽわの髪をなでてやると、さらにしがみついてくる。

「おい、いい加減起きて練習しろよ慈郎・・・」

「・・・何をそんなに気を張ってるの?跡部部長」
「あーん?何言ってやがんだよ」
「別にいいけどね。慈郎、いい加減練習しておいで。榊監督がめずらしく球出ししてるし」
「・・・・・・・・! まじまじ?!俺、行って来る!」

はいはい、ちゃんと準備運動してからコートに入るんだよ?なんて言いながら見送る後姿。
慈郎は俺が打ちのめされたあの日から、なかなか傍を離れたがらない。
慈郎が傍にいるから、跡部も言いたいことを俺に言えないで居る。だから、
「跡部、言いたいことがあるなら、言えばいい。今この場には、二人しか居ない。」
発破をかけるように言葉をつむぐ。跡部の視線を感じたけれど、俺はコートから視線をはずさなかった。

「お前は、俺を恨んでいないか?」

二人の間を風が通り過ぎる。なんて事を言い出すのか?

「跡部、俺は別に強くないよ。だけど跡部の言葉になんて惑わされてない。」
一瞬、跡部の視線が泳いだのを、見ないフリをして言葉を続けた。

「宍戸と試合をしたのは俺の判断。負けたのは俺の実力。それでも、ここに戻ってきたのは俺の意思。」
毅然として言い放ったけど、俺は跡部を見れないでいた。
俺はそう、けして強くなんかないんだ。
心も、体も、いまだに成長の途中だ。
そして、選手としてはくじけてしまった俺は、選手として此処にかえってくることは出来なかった。
それでも帰りたいと願ったから、今、此処に俺は居る。

「戻ってきて欲しくなかったならそういえよ、跡部。だけど。俺はここに居るよ。お前に何を言われても出ていったりしない」
「いや、どんな形であれ、とどまったお前に何も言うことなんてない。」
「そう」
二人の間にまた風が吹く。今日は少し、風が強い。
跡部から向けられる視線は、その強い視線は、穏やかなものに変わった。



「ま、せいぜい雑用をしっかりこなして追い出されねぇようにするんだな!」

跡部の口調がいつもの調子に戻った時には、跡部は既にコートへと向かって歩いていた。

「言われなくても、俺は有能だから居なくなったらこまるだろうが」

ひらひらと手を振る跡部は、やっぱりいつも通りの余裕に満ちた姿だった。















俺はここに居るよ。 ここで笑い続ける。
誰に何を言われても、俺は此処で、自分を誇る。


















































20051028