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狂おしいほどの歓喜と憎らしいほどの愛を与えられて、遥か彼方に死んで往った神様の御子の事なんて、現代を生きる僕にしてみたら、何一つ感慨深いものではないと言う事実。 そしてなにより、神様なんて信用して無い、僕の真実。 THE LORD'S PRAYER 拝啓 神様
嫌に為る位に晴れ渡った初夏の空に、大敗を記して、それでも我が物顔で校内を歩ける自分の傲慢さに、正直驚きました。 窓際に見る校庭も、こんなに狭かったのかと不意に想いました。 何たる様か。 僕はいつから、こんなにも遠くに眺めていたのでしょうか? 貴方を敬愛する憐れな子羊達を。
眼を瞑った貴方の御子は、どうやって其れを見るというのか。 磔にされた貴方の御子を、何故、御尊敬せねば為らないのか? そしてなにより、いるかどうかもあやふやな、貴方をどうして愛す事ができるというのか? 陽射しは日に日に強く熱くなっていきます。 日焼けというより火傷をする自分の肌は、ますます隠さなければならないでしょう。 そして、負けて居場所を失った僕は、何事もなかったふりをして此処に居座るには少々首を突っ込みすぎていたので、いい加減僕自身も隠さねばならなくなってしまいました。 貴方も貴方の御子も、無垢な人の、心の一つも救えないくせに。
貴方も貴方の御子も、穢れた僕の、心の一つも救えないくせに。 誰にも言っていない僕の今後の進路は、勿論この先も誰にも言う事は無く、ただ秘密裏に、坦々と決まっていくのだと思います。 そんな事などどうでもよく、少なくても僕以外の皆はこのまま持ち上がるのだと予想がつきます。 高校でも、仲良くテニスを続けてくれればいいのです。そして、そんなこと、僕は知らないで生きていくのです。 なぜなら、その場に僕は居ないから。 きっと、誰も気が付かないでしょう。でも、僕が居なくても、構わず気にせず幸せになればよいのです。 僕が居るか居ないかは、別にそんなに大した問題でも無いのですから。 無能な貴方がたを崇め奉って。
僕は貴方がたより幸せです、と。矮小な存在だと認めるように? 悪言の限りを尽くしてもみても、貴方は其れを聞き流すだけ。 唯の一人も救えぬくせに。だから貴方は何も見ない。 その利己主義な考えを、如何して僕が信じると? 「観月、お前さっきから何書いてるんだ?」 「んふ?ああ、これですか?手紙ですよ。大体見たら分かるでしょう?便箋に書かれてる上、拝啓で始められた論文があってたまりますか」 「いや、うん、申し訳ございません・・・?」 「わかればいいんです。それより赤澤、もうすぐ授業が始まりますよ?今日は、貴方の嫌いなキリスト史が一時限目です。」 「んぁ?じゃあ、そろそろ部室出るか」 「引退した僕達が幅を利かせてることがおかしんですよ、全く、金田君たちに申し訳ないです、赤澤のせいで。」 「俺かよ?!」 「ええ、君ですよ。」 傍で赤澤が吠えていました。ぬおぉとか、そんな、咆哮のように。 近くにいた後輩達は、優しい顔で笑っていました。 そうですよ、あなた達の部長だった男は、良くも悪くも正直な男なのです。 裏も表もなく、そう、真っ正直に生きている、尊敬に値する男です。 神様よりよっぽど、愛おしいのです。 だから君は。 少しでも、僕を嫌ってください。君の記憶には嫌な僕だけで良いのです。そして忘れてしまいなさい。もう、僕と出会った不幸などさっぱり忘れてしまえば良いのです。 僕と出会った不幸など、君はいつまでも引きずらなくて、いいのです。 ねぇ、懺悔を聞いて、貴方はそして赦すのでしょう。
咎人の、その苦痛を、赦免して差上げるのでしょう。 貴方に関係の無い事だというのに。 神だというだけの、第三者の貴方が、その罪を赦すというのです。 ああ、なんと傲慢な事でしょう。 その咎人が、赦しを乞わねば為らないのは、その咎を持って苦しめた者にでは無いでしょうか? 「そういえば、観月は聖書の内容とかキリスト史詳しいよな。」 「ええ、そうですね、だって・・・」 「赤澤〜ちょっといいーだ〜ね〜?」 「あ、ああ・・・スマン観月、先行っててくれ。」 隣人を愛する事を諭す前に、自分を愛してあげる事を諭さずしてどうするのですか?
自分を愛せないものが、他人を愛する事なんて、本当はできない事ですよ。 自分を嫌いなものが、他を愛するなんて、其れは欺瞞です。 だって、相手をちゃんと知らないのに、非難をするわけにはいかないじゃないですか。 「ええ、いってらっしゃい。お言葉どおり、先に教室へ行ってます。遅刻はしない程度になさい」 先を見るために、赤澤たちを置いていこうと決めました。 それは、先を見て欲しいから、自分が置いていかれたのかもしれません。 結局貴方は何も出来ないのです。
それでも貴方の御子は、そしてその弟子達は、無能な貴方を敬愛し、無能な貴方を信じるのです。 何も出来ないのと、何もしないのは、似て非なるものだという事を、聡明な貴方は知っているはずでしょう? そんなあなたを、好きになんて、なれるわけがはなから無いのです。 僕は貴方が嫌いです。 貴方への愛を、試されたくなんて、ありません。 僕は間違っても、貴方にあの人捧げたりなんかしません。 それならば、空に向かって唾を吐いて差し上げましょう。 僕から貴方への供物など、それで全く十分でしょう。 あの人は、貴方すら手出しを赦されない、光なのです。 よくわからないけれど、気分はおそろしく良好でした。 赤澤との会話が終る前に手紙が書きあがったからかもしれないし、僕はいつでも、旅立つ準備が出来ているからなのかもしれません。 理由なんてどうでもよくて、ただ、間違っても、涙は流せる気分では無いことが大事なのです。 僕らに手出しは不要です。
貴方なんて、一生無であるが故の有にしがみついていればいいのです。 それではさようなら、神様。 貴方はどうぞ、永遠に、見えぬ空間に漂い生きていってください。 敬具 其れは天使の様と称される様な微笑で。小さく賛美歌を歌った。 通りすがりの女生徒のうっとりした顔と目があったので、その彼女には微笑みを返しておいた。 通りすぎて誰も居なくなった渡り廊下で、びりびりにしたその手紙を、宛先不明のまま空に放った。 きっと、此処の掃除の方が大変だろうと想いながら。 白い窓から、白痴の貴方へ。 さようなら、神様。 さようなら、神様の子供。 僕は愚かなる人より生まれた人の子です。 僕は、神様の子になど、なりたいとは小指の先も思いません。 Our Father, who art in Heaven.
Hallowed be Thy Name. Thy Kingdom come. Thy Will be done on earth, as it is in Heaven. Give us this day our daily bread. And forgive us our sins, as we forgive those who sin against us. And lead us not into temptation, But deliver us from evil. For Thine is the kingdom, and the power, and the glory forever. 天にまします我らの父よ。 願わくは御名をあがめさせたまえ。 御国を来らせたまえ。 御心の天になるごとく、地にもなさせたまえ。 我らの日用の糧を今日も与えたまえ。 我らに罪を犯すものを我らが許すごとく、 我らの罪をも許したまえ。 我らを試みにあわせず、悪より救い出したまえ。 国と力と栄えとは限りなく汝のものなればなり。 Amen
アーメン 20050502 信仰は人の自由です。私は全てを信用して無いからこそ全てを利用できます。 キリスト教の知識がほとんど無いのに書いてるので、解釈間違ってる箇所多々あるかと思います。 が、そこはあまり突っ込まず、雰囲気を感じていただけると嬉しいです。 とりあえず、気分を害した方には非礼を詫びておきます。 |