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+ 菜の花 +
「視覚を楽しませるだけじゃない。その全て人間に良い様に使われるんだ。俺は好きじゃないよ、その花」 滝さんがはっきりと嫌悪を示したのを見たのは、其れが初めてだった。 「滝さん・・・?」 「本人全てを使って欲しいといったわけじゃないのに、此方の都合で全て差し出すなんて、俺は絶対に嫌だ」 顔には何の色も無く、ただ、彼の持つその全ての温度が下がったような錯覚がした。 「だから日吉は、自分が納得した上で、自分を差し出せよ?」 「滝さん・・・」 「名のある雑草になるな。この花のように、本人の意思無しに全てをさしだし奪い取られるな。お前は強く、強く、何処までも高みを見るといい。そして、引き際を自分で知って、其れすらも人目を奪うあの桜のようになりなさい。」 「滝、せんぱい・・・」 「ほら、泣かないで。日吉なら大丈夫だよ。跡部がお前を選んだのだから。その力があると跡部が認めたから、お前は選ばれた。 だから、胸張ってがんばりなさい、部長さん」 不意に色が戻ってきた彼が、優しい笑顔で頭を撫でてくれた。 それは、本当に先輩たちが卒業してしまう、その寂しさに涙を零しそうになった日の出来事だった。 |