+ 地下鉄 +



か た ん  か た ん
揺れる電車。

一番初めに、くてんと眠りこけてしまったのは、一番良く遊んだ樺地の妹だった。
樺地と跡部に挟まれて座っていた妹は、跡部の膝の上に完全に横たわってしまっていた。
優しく髪を撫でていた跡部の手が止まる前に、樺地もゆったりと眠りの世界へ落ちていった。



「ふ・・・この兄妹は、二人して」
呟く跡部の肩には、油断しきって眠ってしまった樺地の頭がもたれかかっていた。

電車の騒々しい音にかき消された跡部の呟いた言葉を聴いたものも、眠る兄妹を想う表情も、その瞬間を見聞きしたものは、誰もいなかった。



それは、地下を走る電車の、密室の中の優しい時間だった。




20050418