+ 踏切 +



警笛が鳴り響く。
静かな空間を切り裂く音。
ゆっくりと降りてきた遮断機。
下を向いていた視線を不意に上げると、遮断機の向こう側、見知った愛しい姿があった。

今この場は、自分達以外、他に何も存在しない空間だった。

「××××!!!!」

叫んだ名前は、電車の通過音にかき消された。

駅から遠いこの踏み切りを通過する電車の速度は速く、高速で移動していく電車の窓から見えた彼の姿は、かすかに笑って見えた。



そして・・・



警笛が止み、辺りに静寂が戻ってきた時には、眼の前に居たはずの彼も、一緒に消えてしまっていた。



アレは、幻だったのだろうか?
自分以外の温もりしかない手を握りながら、今傍に居ない彼を思った。

自分はこれほどまでに、彼に恋焦がれているのだろう。




20051013