お気に召したのは、あいつだけじゃねぇ



one or zero = dead or arive



一番初めに越前に目をつけたのは、確かに奴かもしれない。
それでも、その手を離したのも奴だ。そして、ねめつける様に空を見上げて居たのを、偶然にせよ出会ってしまったの俺なのだ。
悔しいなら、その手を離さなければよかったのだ。強引にでもその手を掴んで、一緒に飛んでしまえばよかったのだ。

俺なら、そうする。けして、放しはしない。



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「あんた、俺に何がしたいの?あのおっきいの居ないのに、あんたは何してんの?」
「樺地は俺のだ。俺がアレを如何しようと、お前には関係ないし、アレが居なくても俺は俺だ。」
「だから?」
「お前が欲しい。そう思った。だからキスをした。」
「俺は、あんたなんか要らない。要らないんだ。」
「俺はお前が欲しい。」
「話を聞かない人だね。」
「お互い様だ。」



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悔しいほど、上手に心に触れられた。
寂しいという感情を、あいつは上手に受けた。
あの人よりも頂上に近いくせに、あの人よりも全てが強いというくせに、酷く寂しがりやだ。
ブラックホールのように飲み込もうとする。

けして、操とか言うものを義理だててるわけではない。
待っててくれとも、待っててやるともいってないのだ。無常にも、それが戒めの様に自分を縛っていても、けして、俺は何一つ、縛られては居ない。

だから、欲しいというなら、あげたとしても、困らない。この全てを、つなげてしまっても、其れは何一つ構わない。



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「お前が手放した手を、俺が握っても文句は無いだろう?」
「お前がその手を差し出して、あいつが其れを握っても、文句は言えないだろう。解っているさ。」
「優等生の模範解答か?俺はそんなものを期待してるわけじゃない。」
「今更だ。今更、待ってろも無いだろう?戻った時、もう一度翳すだけだ。誰かがあいつの手を握っていようとも、もう一度、手を翳すしかないだろう?」
「奪られた方は堪らないな」
「わざわざ電話で宣戦布告するお前がおかしいんだ。」
「フェアじゃないとな。」



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その全ての、細胞の一つすらも全てを。
俺のものにしなければならない。
奴がその手を差し出す日までに、俺は、俺を植えなくてはならない。
一つでも彼を想うニューロンがあれば、彼の手は、また、その手を握ってしまうのだから。










20040309
今朋 獅治

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