なにしてんだろ?


腹は大して減ってない。
なのに、目が止まってしまった。
デリカテッセンのショーウィンドウを覘きながら、ああ、あいつ、俺がこれぐらい作ってやれたら、ぜってぇ喜ぶんだろうなぁ・・・とか、もう、末期としか考えられない事が頭をよぎった。
「激ださだな」自分の言葉が自分を追い討ちする。ああ、もう、ため息しか出ない。



いつだったか昼に、てめぇで作ってきた弁当を一口やったら、渾身の力で喜び勇んでいた。

いかんせん、あいつは犬のようなのだ。
感情表現も、俺への懐き方も、そして、俺の守り方も、全てがあの愚かしくも忠実な、犬の様なのだ。
誰にでも尻尾を振りながら、友好的な態度でいながら、その実、主人以外は如何でも良いのだ。自分さえも、犠牲に出来るのだ。



俺が、あいつを見つけてしまったから。選んでしまったから。そして、己が望んだ事とはいえ、あいつは俺を傷つけたから。俺は、あいつに、重苦しい、鉄の首輪を巻きつけてしまったのだと想う。
「もう、絶対、傷つけさせません」
泣いてしまったあの犬は、俺と、俺以外。
世界の構造を、シンプルにして、守るべきものを守る体制に入った。





「いらっしゃいませ!」
「あー・・・すんませんけど・・・」



俺の為に、世界すらも変えてしまったあの犬に、ご褒美を与えてやるという名目で。

「簡単にでいいんで、あそこにおいてある惣菜の作り方、教えてもらえませんか?」

自分で言うのもあれだが、大好きな御主人自らの手料理でも食わせてやろうとおもう。










20040214
今朋 獅治

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