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壊れかけ電脳頭脳、初期化グローインアップ やんわりと面倒ごとからすり抜けていた。いつだって、後ろを向いたまま俺の手を握り続けていた。後ろを向きながら、たどたどしく前へ進んでいた。 俺があの人の手を探り当てるまでの長い間、先輩は、色んな人に腕を掴んでもらっていたのだ。 色んな人が甘やかしても、後ろを向いてしまっている先輩が、見えるはずも無かった。 「あいつなんかと一緒になって、海堂は幸せになれないな。」 険しい顔をしながら部長が言うのを、黙って聞いていた。 いつまで経っても後ろ向きに歩いてる先輩の其の手を拒めない、部長にとって、多分、大事な後輩の一人の俺を、心配しての言葉だ。 「よっぽど、桃城のほうが幸せにしてくれそうだ」 と、あまりありがたくない事を真顔で言ってのける部長が、悲しそうにしているのは、あの先輩が、いつまでたっても周囲を見ないからなんだと想う。 テニス部や、先輩を取り巻く周囲は、なんだかんだ言って先輩に甘いのに、先輩は、其れすらも気が付かずにいるのだ。 俺も、桃城も、あの越前すらも、結局は甘やかしてしまっているのに、あの人は何一つ気が付かないまま後ろ向きで前へと引き摺られているのだ。 手塚部長が九州へ行き、先輩はますますもって後ろ向きが加速していった。 それでも、俺の手を放そうとはしなかった先輩の手を、俺が強く握り返す事で、なんとか踏みとどまってもらう事くらいしか出来なかった。 データを積んだって、勝てなかったのに。 それでも尚、信頼していた物は、塵屑のように粉々に打ち砕かれた。 もう、やめて欲しかった。 これ以上は、先輩が、壊れてしまう気がした。 もう、立ち止まって、手すら力なく地に落ちてしまう気がして怖くなった。 すがり付いていたもの、投げ出す決意をした先輩が、其れと一緒に全て捨ててしまう気がした。 「先輩!!!」 一瞬、笑ったように見えた。 縋っていた過去と、決別を。 先輩はやっと、自分を後ろ向きに縛っていたものの一つと、対峙していているのだ。 この手は繋いだままで。やっと、前を見据える為に動き始めたのだ。 彼を縛っていた過去の記憶のメモリーカードは、過去を凌駕することで成長し始めていった。 それ以上、使われる事も無かったメモリーカードを、彼は、使う勇気を持った。 少しずつ過去から開放されたあの人が、俺と一緒に、前を向いて幸せになるのは、もう、間もなくだと、想った。 この試合が終わったら、甘やかして甘やかして、散々甘やかして、どれだけ先輩が甘やかされてきたのかを、其の身に教えてやろうと想う 帰ってきた部長が、もう、俺の幸せの心配をしないでくれるほど。あの人の過去に縛られていたメモリーカードを、幸せなものへと変えてやろうと、高い空に誓った。 20040214
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