其の窪み、埋めてよ



僕の道は、既に、無数の深い轍が出来ていて、歩く事は果てしなく困難になっているのだ。
そして彼は、そんな僕の道を、丁寧に直し始めてくれていたりするのだ。
とても根気の要る作業を。直す先から又刻み付けられ、もう、その彼の姿を見るのも苦しくなっていた。

にこやかに笑う彼は、本当は辛いのに・・・。
辛い心は在るのに、彼は其れを凌駕するほどの深い心を持っていた。

つまり彼は、そういう人種なのだ。
稀有な人種。損得勘定を越えられるほど、僕に傾倒してる彼。
綺麗な綺麗な人だと、彼はそう想って僕に接している。そんな大層なものじゃないのに。
其の轍は、僕が自分でつけたものなのだ。誰かが、僕を傷つけたわけでもない。そんなにやわではない。

勘違いしたまま轍を直し続ける彼を、突き放すのは僕ではなく、彼なのだ。
純粋なる、愛情の元で、彼は僕を庇護している。
半永久的に、彼が僕の轍を直し続ける限り、僕の轍は埋まる事は無いのだ。

其れと同じように、僕には、僕という轍を深々とつけてしまった彼を、埋めてあげる事など出来ないのだ。

僕が彼の、彼が僕の、轍に埋まってしまえばいいのに。
僕という轍を、彼という轍を、其のわけを。知ってしまった苦しみは、愛情の下に隠してしまっている彼に、もう、僕からは離れられ無いほど愛しい彼に、僕は微笑みかける以外何が出来るというのだろうか?










20040214
今朋 獅治

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