欲望を孕んだ月。月は君を照らしだす。
開けた視界が映しだす。
情景



月に照らされ青く、白く、美しい。目を覚まさないオーロラ姫。
王子の気持ちがよくわかる。
欲情



まるで誘われたように。烈しく触れたその口唇。
抑えきれない。
衝動



ぶつけたい。君に全てを。
この先を、望みたい。
願望



それでも、離れを選んだのは・・・。僕の、背中。
突き刺さる視線と声に。
冷徹



欲望を孕んだ月。月が僕らを照らしだす。
獣は僕の胎を食い千切り君へ向かう。
激情



声がする。誰にも渡したくないと。
君を冒していく僕の生。
侵蝕



狂気を・・・。狂喜を映す君の瞳は・・・。
深く、暗く、美しい・・・。
魅惑



求める君を
求める僕を



壊したのは君
壊れたのは心



此処にはもう求め続ける僕らだけ。
そう、XXXを・・・
―切望―





be impatient





今日の練習も大変だった。タツボンは容赦無いから。
しかも教師に呼び出されて、俺だけ帰りが遅くなる。
なんてこった。いつもならばっくれるトコだけど、今日は後ろでポチとタツボンが何かを感じさせる視線を送ってくるから、逃げる事も適わない。
誰も待っちゃいないだろう部室に行く。
だって、なぁ?荷物・・・忘れた・・・。バカか?俺は・・・。



俺が荷物を忘れた其処には、誰も待ってるわけが無く、ただ月がこっちを観ているだけのはずだった。
その筈・・・だった。
其処に在る情景は、俺を狂わすにはもってこいだった。
はは・・・。何で此処に居るんや?なぁ、竜也・・・!!
白く蒼く在ろうとする月は、目を閉じている水野竜也を現実味の無い美しさに変えていた。
月は欲望と云う卵を孕んでいたのだろう。俺は其れを腹の中に受け入れてしまったのかもしれない。
目を覚まさないこいつ。そう云えばこんな話が在った。
ずっと眠ったままの女。そいつの名前は・・・ローラだかフローラだったっけ?
まぁ何にせよ余りに綺麗で欲情した男。そいつがキスしたら目が覚めてハッピーエンド。
何だか紆余曲折が有った様な気もするけど、確かそんな話。
ふとそんな事を思い出した。そして気が付けば照らし出された竜也の唇を奪っていた。どれだけそうしていたんだろう?
卵が孵りそうだ・・・。獣が息を吐く・・・。
ダメだ!!!!
帰ろう、はやく此の場を離れよう・・・。
卵が孵る前に。

心を静めて部室を後にしようとした。

「逃げんのか?意気地なし。」
「?!」
背中に刺さる言葉と視線。酷く痛かった。
今振り返ったら・・・俺は・・・俺の卵は孵ってしまう。もう停められなくなってしまう。

「・・・で?帰るのか?人に手を出しておいて、今更奇麗な体の振りして其の扉の外に行くのか?俺をおきざって・・・。一人でイクのか?」

「何言ってんのや。お前も一緒に帰るやろ?俺を待ってたんやろ?な?」
後ろを振り向くわけにはいかない。未だ理性は此処に在るうちに、早く、 早くこの場所を離れたい・・・!
魔性の月に是以上狂わされたくない。俺も、あいつも・・・。
分かってる。体は・・・心は・・・欲しがっている。手に入れて誰にも放したく無いと。
「ココに来いよ。シゲ」
もう後には戻れない。俺の卵は孵ってしまった。
欲望という名の獣は、卵から孵って俺の胎を食い千切って出てきてしまった。一歩一歩、のろのろと竜也の前へ向かう
欲望を孕んだ月は何も俺だけに卵を渡したわけでは無いのだ。ずっと其の月に照らされていた竜也だって、其の可能性は有ったわけだ。
そう、もう二人とも後戻りはできない。



欲望を孕んだ月は白く、蒼く、俺たちを照らした。
絡み合う舌を。組み敷かれた身体を。
深く深く身体が交わる程に、意識は強くなっていく。
もう離さない。誰にも渡さない。心を放さない。


俺に、俺の精に冒されていく竜也を奇麗だと思った。
追い詰めていく感覚を、心地良いと感じた。
このまま侵蝕していたい。俺だけを感じ続けて欲しい。
なんども追い詰められていくこいつは、狂喜の声を上擦りながら、狂気を瞳に宿している。
・・・なんて綺麗なんだろう・・・
其の、深く・暗く美しい眼は・・・。





俺は心を求めた。体は其の次で良かった。
お前は体を求めた。気持ちを置き去って。心の無い振りをして。



理性を壊したのはお前。
でも壊れたのは心。踏み潰された二人の良心。
堰は壊された。欲望は止まることを忘れた。
ココに居るのは欲望を孵してしまった、獣に支配された二人。



お互いを求め続ける。

お前の熱を、俺の蜜を。

切望してるんだ。

禁じられた感情を

禁じられた行為を

其のことを知ってるのは

俺と竜也と

欲望を孕んでいたあの月だけ・・・―――










20020720
今朋 獅治

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