鎮魂歌
〜君に捧げるレクイエム〜





只生き急ぐ僕等を、誰が咎めようか?

只死に逝く僕等を、誰が止めようか?

其の為に生き 其の為に死ぬ僕等を






只死の感覚が身体を伝う。辛くも無く哀しくも無い。只・・・。

只、死は何時も隣に在ったのに、何故今こんなに生に未練を感じるのだろう?



ふとした事がきっかけで、アスマさんと親しくなった。

そして

ヨロコビを知り、カナシミを知った。

貴方を知り、僕を知った。

繋がる感覚を幸せだと思った。

僕の全てを預けても良かった。



死神が僕の耳元で囁く。「もう、貴方を連れて逝っても善いか」と…。

「もう少し待ってください…。最期にあの人に逢いたい」

せめてもの願いを死神は承諾してくれた。



此の世の者でない事に気付かれぬ様に逢いに行った。何時もと変わらぬあの人に、何時もと変わらぬ此の街で。

そして夜の街並みをあても無く歩きつづけた。抱きしめてもらう身体はもう無いから…。



「ああ、今夜も善い月夜だな…。」

煙草に火をつけながらアスマはそう呟いた。

「ええ…そうですね…。アスマさん明日は任務でしょう?もう…帰らないと…。」

寂しそうにハヤテが言った。そんなハヤテに気付いたのかは解らないが、そうだな…。とアスマは立ちあがった。

月は傾き日がもう其処まできている。ハヤテは去って行く後ろ姿を只見つめていた。

もう見えなくなる頃だった。

突然アスマの声がした。

「おいハヤテ。」

「何ですか?!」

「もう少ししたら其処にイクから、其れまでゆっくり寝てろ。」

「?!」

ああ…此の人は初めから僕が死んだ事に気が付いていたのか

後ろを振り返る事無くそう言ったぶっきらぼうな声。音も無く涙が頬を伝った。容亡き者であると忘れてしまうほど儚く美しく…。

「…有難う御座います…。おやすみ…なさい…」



最期の願いを叶えてくれた死神が迎えに来た。



棄てた煙草の煙と一緒にハヤテの姿は朝霧の中に消えていった。約束を胸に、今は只あの人が幸せである事を祈って。



―寂しくない。哀しくない。全て煙草の煙と一緒に持っていくから。空貴くけすから―










20020720
今朋 獅治

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