是は入学して間もない頃。未だ、部活動見学すらしなかった頃のお話。
だから知らない。あの人の名前も。何もかも。





目撃






是は何と云うものでしょうか?
始めてみる姿に。
手に・指に。
目が奪われていた。
この気持ちは何でしょうか?



体育館の裏。
此処は授業をサボるには絶好の場所で。誰の目にも触れないような、隔離されたような場所。
なんとなく、今日は授業が自習だったから此処にずっといた。
部室でも良かったのに、俺は此処に居たんだ。

俺は初めからここに居たんだ。

することも無くただボンヤリと過ごしていた。寝るのも飽きたしどうしたもんかと思ってた。
何処からか、微かに煙の匂いがした気がした。
別に堂々としてもよかったのに、気が付けば足音を立てないように歩いてる自分がいた。
そうっと覗いたら、其処には人がいた。
眼が奪われた。
長くてきれいな指が銜える煙草が、酷く綺麗だった。
動けなくなって、俺は食い入るように見つめていた。
其れがどれだけの時間だったのかはわからないけど、
時間の流れは俺の中で止まった。



体育館の裏。
此処は授業をサボるには絶好の場所で。誰の目にも触れないような、隔離されたような場所。
つまり、優等生が息抜きするには、なんとも都合が善い場所。
誰が想像する?
青学最強の男が。
青学最凶の頭脳を持つこの俺が、煙草を吸うなんて
知ってるのは、テニス部レギュラーくらいのモンだろう。
ナンセ共犯者たちだからな。とはいえ、河村と海堂は吸わないけど。

視線を感じた。後ろから。でも其の視線は俺や海堂にじゃない。手塚にだ。
其の視線に対して俺と海堂は後ろを向いてる。ばれてるのは手塚だけだな。
取り合えず、

海堂も気が付いてるらしい。
あの視線は・・・熱に浮かされた視線だ。



体育館の裏。
此処は授業をサボるには絶好の場所で。誰の目にも触れないような、隔離されたような場所。
何で俺が此処に居るのかは良く分からない。
手塚部長と仲のよい乾先輩と仲が善いから、俺は良く、こう公然と授業をサボることが出来る。

・・・後から視線を感じる。食い入るように。其れは明らかに部長の方へと注がれていた。
知ってる。アレは熱に浮かされた瞳。
アアやっぱりこの人は気づいてるんだ。目が合った瞬間、にこりと微笑んだ其の顔は、どこか楽しそうだった。

「ねぇ、手塚。お前近いうちに・・・。」
「何だ?」
「否・・・。何でもない。わかる日はすぐだし。」
そういって乾先輩はタバコに火をつけた。

「そんな強い煙草中学の内から吸うなっつってんじゃないっすか・・・」
しばらく黙ってるつもりなんだと理解して、俺はいつもどおり振舞うことにした。
「分かってる。そのうちね。大体この間コレに変えたんだから。ちょっとはエライでしょ?」
「ホープ吸ってる中学生がオカシイんす。」
と其のときはいつもどおりに事は進んでいた。

後ろの視線は痛いほどだった。



体育館の裏。
此処は授業をサボるには絶好の場所で。誰の目にも触れないような、隔離されたような場所。
生徒会長をやって、部長をやって、俺にこれ以上何をしろという?
毎回のテストは総合点では1番。
まぁ、個別にすると、乾(物理)や不二(古典)や河村(数学)や大石(英語)や菊丸(世界史)には1・2点で負けてはいるが。
パーフェクトにこなす自分は嫌いじゃないが、疲れるんだ。
乾を強引に生徒会に引き入れて、こうして時々授業を耽る。

今日も又、こうしてふけていた。
大しておいしいとは感じない煙草に火をつけて。
煙の流れを見るのが好きであって、別に味はどうでも善い。

不意に乾が話し掛けてきた。
「ねぇ、手塚。お前近いうちに・・・。」
「何だ?」
「否・・・。何でもない。わかる日はすぐだし。」
そういって乾はタバコに火をつけた。
何が善いたいのかさっぱりわからず、其れでも、こいつはそういう奴だから、それ以上深く詮索しなかった。
「そんな強い煙草中学の内から吸うなっつってんじゃないっすか・・・」
少し拗ねた顔をして、海堂は乾にそう言った。
誰がなんと言っても絶対に変えることの無かった銘柄をこいつはひとつ下の後輩に言われて、あっさりと変えていた。

「分かってる。そのうちね。大体この間コレに変えたんだから。ちょっとはエライでしょ?」
「ホープ吸ってた中学生がオカシイんす。」
確かにな。

『さっさと死んでも善いから。何にも執着してないんだ。いつか何かに執着したら、俺はコレを手放すよ。

真っ黒なココを救ってくれる何かがさ。そいつの為に生きたいって思ったら。ありえないと思うけどね。』

思い出した昔の言葉。
俺はなんとなく、何かが始まる予感がした。
吐き出した煙をボンヤリ眺めながら。



それからは。
たびたびサボっては此処に来た。
又逢えるかもしれないと思って。淡い幻想でしかないとは判ってたけど・・・。

結局、それからあうことも無く、何日か過ぎたった。

出会えたんだ。思っても見なかった場所で。

もう一度会いたいと思っていた人が、すぐ其処に居た。

現生徒会長兼男子テニス部部長・手塚国光。
其れが彼の肩書き。あの人は俺の部活の部長だった。

何度目かの部活の終わり、俺は其処にずっと居た。
周りの奴らが次々帰っていく中、かばんを残したまま未だ帰ってこない人を待ち続けた。
残っているのは青学レギュラーと呼ばれる人達だけだった。
不二センパイ・河村センパイ・菊丸センパイ・大石センパイ・桃城センパイ。
海堂センパイと乾センパイは、部長と一緒にどこかに消えていた。

俺は其れが気に食わなかった。
誰よりも傍に俺が居たい。あの人の隣には俺が立ちたい。
悔しかった。あの人の中には俺の存在なんて無いから。

どんなことをしてでも、俺は手にいれようと思った。
帰ってきたら。俺は、手にいれて見せると思った










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御免なさい;微妙なところできっちゃいました・・・。



20020805
今朋 獅治

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