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連鎖反応 初めは気になって見ていただけだった。 「今年もまた豊富だな・・・。」 「そうだな、手塚。」 「データ取るの大変そうだねぇ・・・。乾。」 「まったくだよ。っていうか、嬉しそうに言うなよ不二・・・本当に大変なんだからな。」 「でも趣味なんしょ?乾ってば其れが。」 「菊丸・・・。まあな。」 「それで?今年はどう?良さそうな子はいる?」 「気になるんだ大石。そうだなぁ・・・此処まで上ってきそうなのは二人、かな?」 「二人?」 「なんだ。河村も気になるんだ。そう、ほら、あそこで喧嘩してる・・・喧嘩?!わるい、止めてくる!」 そう走り出したあいつは。どうも弟が居ないせいか、後輩には甘いらしい。頼られれば面倒を見たくなるようだ。 それでもあいつは、好きじゃない奴のために自分からは動こうとはしない。 今までも。きっとこれからも。 そのあいつが自分から動いてるのだ。 そしてそれを知ってるのは、同学年のレギュラーだけ。 「乾はどっちかに魅かれたみたいだね。」 「いいことじゃん♪ね?大石☆」 「そうだな。これで乾の煙草が軽くなればいいけど・・・。」 「どっちにしても善い方に向かうといいね・・・乾。」 「俺たちは、見てることしか出来んからな。」 誰も居ない家に小さな頃から一人でいたあいつは。 寂しさを隠して、手持ち無沙汰を恐れてデータ収集・分析をしていたこいつは、今では習慣となっていた。 「今日はどうしたんだ?其処の二人は?」 俺達以外にはわからないほど微妙に笑う乾の顔。 「「こいつが悪いんす!」」 と、お互いに引こうとはしない二人にはほとほと手を焼いてるようだ。 乾が手を離してしまったら、途端に掴み合い威嚇しあいだしてしまった。 「ほら、落ち着いて。ちゃんと二人の言い分は聞くから。どっちからでも善いから、俺に話して?」 と言って目線と一緒に身体も二人の高さまで落としたら、二人とも少し複雑な顔をした。 俺の横ではあいつの優しい(強調)友達が声を殺して笑っていた。 「・・・お父さんて呼んで善いっすか?」 そう桃城にいわれていた。 大きく複雑そうな顔をした。 ボソッと、 「何かむかつく・・・。わざわざ目線なんか合わせやがって・・・。」 という声も聞こえてきた。 まぁ、どっちにしても俺らは楽しいな。乾の事にしてもに後輩二人のことにしても 結局笑いを堪えられなかった菊丸のせいで、けんかの原因も分からなくなってしまって、 「まぁ、もういいいだろう?二人とも落ち着いたし。喧嘩両成敗って事で。」 ってことで片付けた乾に対して渋々先輩命令を聞く二人が可愛かった。 あの二人の本質は多分とても近いものだと思う。同属嫌悪。それが一番近いのか? いや・・・ちょっと違うか?多分海堂は初めは同属嫌悪。だけど今更仲良くすることも出来ないから。桃城は相容れたいのにそうしてくれない腹立たしさから喧嘩をするんだろう。 努力は惜しまないんだ。貪欲に強くなろうとする。ただ片方は人に甘えるのが得意で、片方は極端に甘えるのが苦手なのだ。 小さな違いは大きな壁を作る。 人の輪に入ろうとしないから、一人でいることも多い。 そんなだから目に入ってしまったのだろう。 あの視界に映りこんでしまったのだろう。 小さな頃。 いつも使っているのとは違うノートが置いてあった。 それはエンジ色をした普通のノート。 何も書いていない真っ白なノートを、使うわけでもなく、ただずっと愛しそうに、切なそうに見ていたのを覚えてる。 そして今も。 俺は、祈ることしかしてやれなかった。 次に声を掛けた。
どう云う訳か、俺は鍵当番なんだ。本当はこんな面倒くさいことしたくは無いけど。 毎日毎日、誰よりも早く部室に行く。 誰も居ない部室。 俺の次に来る奴はわかってる。 「おはようございます。」 「やあ海堂。おはよう」 一生懸命努力をするこの後輩は、確かに目つきは良くないけど、その必死の努力が可愛くて仕方が無い。 まぁ、基本的にうちの部活のレギュラーは下が可愛くて仕方ない人たちが多いんだけど。 その次に来る奴はあまり決まっていない。 今日は、乾が次に来た。 「おはよう。海堂」 入ってくるなりそう言ったのだ。この男は 「あ・・・乾先輩。おはようございます。」 「大石もおはよう。」 「・・・ああ、おはよう・・・。」 「そんなに驚いた顔しなくってもいいじゃないか。」 そう小さな声で言われて初めて、おれは自分が相当驚いた顔をしていることに気が付いた。 「じゃあ俺いつもどおり行ってきます。」 と海堂が律儀に申し出た後、俺は乾に微笑まれた。 「いつもどおりって何?」 「気になるのか?乾。」 と切り返すと酷く困った顔をして、 「わからない。」 と呟いた。 そんな顔をする乾を見たのは初めてで、少し嬉しかった。 「珍しいもの見せてくれたお礼に教えておいてやるよ。お前はどんな感情にせよ、好きじゃなきゃ自分からなにもしないよ。それと、海堂は外周走ってるんだよ。」 「ありがとう。」 そういいながら、エンジ色のノートにさらさらと何かを書き込んでいた。 乾のノートはあまり好きじゃないので俺はあまり見なかった。 だから気が付かなかった。 其のエンジ色のノートはいつものノートと違う、少し狂気のようなものを纏わり付かせていることに。 善い事をしたと思っていた。善い方にあの二人が転がってくれれば、きっとうまくいくと思っていた。 外を見たら、なんだか嫌な空模様だった。今にも雨が降りそうな。 折角の気分が少し萎えた。 エンジ色のノートに書き込んでいる乾を見たら、突然雷が走り出した。 薄ら寒いものが背筋を走っていった。 本気で怖いと思った。 だって其のときの乾の顔は、狂気じみていたのだから。 降りしきる雨。 俺は、海堂が心配だった。 練習に付き合うようになった。
今日は朝から雷が鳴って凄い雨が降ってきた。お陰でいっつも朝練遅刻寸前の俺には願っても無いことが起きた。 『・・・あ、英二?俺。あのね、今日の朝練は無しになったから。・・・うん?そう、本当。だから、ゆっくり気をつけておいで?・・・俺は授業が始まるまでここに居るよ。折角着ちゃった人たちに伝えなきゃいけないからね。』 と・云う事で、朝練は中止。 更に今日の部活も自主トレでOKになった。 つまりはやらないで帰ってもぜんぜん構わないって事☆ いい子にはプレゼントがあるんだなぁとか思いながら、雨の中、俺はうきうきしながら学校へ向かった。 取り合えず、大石が一人で寂しいだろうから、部室に顔をだした。 「おっはよう!大石☆・・・あれ??何か元気ないよ?」 っていったら、 「皆に電話したから、きっと疲れたんだよ。心配してくれてありがとう。」 と返されたんだ。 それでもすごく心配だったから、俺は大石の隣に座ってちょこんと首を肩に置いた。 ごめんね大石。俺はわからなかったんだ。大石が何に怯えたのか。 放課後になって、三年生のレギュラーと何人かと、俺と大石と不二と手塚とタカさんと海堂が自主練をしに来た。 俺は帰ろうとしてたんだけど、皆に、レギュラーなんだから。と引きずられてきたのだ。 しぶしぶ練習してたら、俺の視界の先に乾が映った。 どうしたんだろうと思いながら見ていた、かおるちゃんに近づいていった。 会話はちっとも聞こえなかったけど、俺は見たんだ。 乾から何かを話しかけたのを。 だからそれを大石に言ったら、 「そっとしておこう?」 といわれた。 だけどすごく気になって、そっちをずっと見てた。一生懸命耳も澄ました。 「じゃあ、これ。やってごらん。少しずつ量は増やして。メニューを作ってすぐの何回かは一緒にやろう。」 乾がそう言って、ペラリと紙を薫ちゃんに渡した。 すぐに俺はそれが俺たちにも作ってくれてる個人用練習メニューだと認識した。 乾が自分からアレを渡したって事は、薫ちゃんも俺たちの仲間になる日も近いのかな?と思った。 少なくとも乾は薫ちゃんが気に入ったんだ。 薫ちゃんも乾を信頼し始めたんだ。 仲間が増えるんだ。 単純にそう思って居たんだ。 だから、乾の瞳が、笑ってなかったことに気づくことが出来なかったんだ。 だからね?単純な俺を許して? 胸がざわついていった。
英二の反対側で俺は柔軟をやっていた。 だから、英二が乾たちを凝視してるのはわかってたんだ。 だって其の視線に気が付いて、俺もそっちを見てるんだから。 「ねぇ河村。何か乾いつもと様子が違わない?」 そう俺の背中に座ってる不二が聞いてきた。 「いや?俺にはわからないけど?」 「そう。」 とだけ答えて不二は又黙ってしまった。 何か考え事してるらしいその表情が酷く綺麗だな・・・と思った。 こんな綺麗な人を恋人に出来る人が羨ましいなと思いながら、俺は乾たちから視線をそらそうとした。 だけど結局そらすことが出来なくなった。 ぽたりぽたりと乾の左手から血が滴り落ちていた。 「乾?!にゃにやってんの?!」 其の痛々しい姿に俺はふらりとした。 「にゃっ!タカさんまで目眩?!」 何で俺、寿司屋の息子なのに血がダメなんだろう? 役に立たないなぁと思いながら 俺たちは保健室に連れて行かれた。 自分の手当ては自分で出来る。利き腕と逆だし。といいながら、心配する皆を乾は部室へ追い返した。 俺はというと、小さな小さなベッドの上でしばらくの安静を言い渡されていた。 「大丈夫か?河村」 と一番の怪我人に俺は心配されてしまった。 「俺はぜんぜん平気だよ。大変なのは乾だろう?」 そういったら、 「そうだな。」 と素直に言い返した。 今だったら。と思って、俺は聞いてみたんだ。こんな俺でもちょっとは役に立てるかもしれないと思ったから。 「ねぇ、乾。何かあった?不二がね、いつもと様子が違う気がするって言ってたんだ。」 といったら、 「胸がざわざわする・・・。」 と答えた。 「わからないんだ。俺は海堂薫にどうしたいのかがわからないんだ。愛してるんだと思うんだ。でも、其れをどうやって表したらいいかちっともわからない。頭が狂ってくるんだ。少しずつデータを集めれば集めるほど。俺は・・・壊れていくんだ・・・。壊してしまいそうなんだ。」 俺にもうちょっと勇気があれば、声を出せずに無く友達を励ますことが出来たでしょうか? 声も掛けられず、俺は結局自分が役に立たないのを痛感した。 煙草の数は増えていった。
乾が怪我をして、其の血を見て河村が倒れた。 気が抜けた皆は少しずつ帰っていった。 「あの・・・不二先輩・・・」 震える声で僕に話しかけてきた後輩を俺は突き飛ばしたりは出来ない。 「どうしたの?海堂君?」 「あの・・・俺、乾先輩に何かしちゃいましたか・・・?」 「君は何もしてないよ。大丈夫。きっと話の途中に違うこと考えてイラついたんだよ。乾はそういう奴だよ。」 と安心させてあげた。 「そっすか・・・。ありがとうございます・・・。それじゃあ、おつかれっした。」 そう言って帰った彼が何故か心配になった。 今にも倒れてしまいそうな。 今更。彼はこんなにも細かったのかと認識した。 ちょうど彼とは入れ違いに乾と河村が帰ってきた。 帰ってくるなり煙草に火をつけて、あっという間に灰皿は満杯になった。 「幾らなんでも吸いすぎじゃないの?乾?」 そうたしなめても、乾は聞く耳を持たなかった。 こんなにも煙草にすがる友をはじめて見た。 其のときの彼の表情は驚くほど怯えていた。 外は雨が降っていた。 もうしばらく降りそうだと思った。 下手をすれば明日も降り続けるだろう。 残っていた奴らは帰ることにした。 どれほど言ってもこの場を動こうとしない彼は置いていくことにした。 コンナ状態の彼を置いていくのも忍びなかったけど、 頑として動かない彼をどうすることも出来なかったから。 「落ち着いたら、早く帰りなよ。」 そう、言うことしか出来なかった。 この選択は正しかったのかどうか何てわかるわけが無い。 ただ、最悪の筋道を作ったのだけは確かだった。 だって、俺達は影にこっそり佇んでいた海堂に気が付かなかったんだから。 正気を失いかけた友達と、尊敬している先輩を心配している後輩と。 今までのことは仕組まれていたように。 雨が降り続いていた。 最初に彼がおかしくなったのはいつからだろう? 見逃したシグナルは、大きかったのかもしれない。 ごめんね? 本当は君達の気持ち知ってたんだ。僕は。 だけど、君達自身で解決して欲しかった。 そんな僕の小さなエゴが 君を、 君達を傷つけるなんて 思っても見なかった。 連鎖反応のようにめまぐるしく起きていく事柄。 それは誰も止める術を持たない。 一度起きてしまったんなら、 あとは、終わるのを待つしかない。 彼の手にあったいつものノートと違うエンジ色のノート。 僕だけだろうか? 血のようにみえたのは・・・。 *** やっぱり微妙に切ってしまった・・・。 コレの続きも、目撃(塚リョの馴れ初めのお話)も、近いうちにUPになりそうです。しかも裏に・・・! むしろこれの続きは思想も行為もやばい気がぎゅんぎゅんするのは何故でしょう・・・。 20020811
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