貴方に嫌われたいのです。

伝えられない気持ちを抱え続けるくらいなら、

俺は、貴方に嫌われてしまいたい。

ならないベルを待つ君を思うと、

心が締め付けられそうになる。

君から送られてくる全ての言葉を無視し続ければ

孤独に苛まれていく。

君を思ったこの行動を、

全ての人に非難されても。

俺は貴方に嫌われたいのです。

ゴメンナサイ・・・

貴方が望むなら、

俺が消えても善いから・・・





深い闇





「ねぇ、乾。最近海堂と何かあったの?」
そう不二に聞かれて俺は何も答えられなかった。
「何でそう思うんだ?」
「海堂も君も、少しやつれた・・・。」
そう?ととぼけて見ても其れは虚しい言葉の響きで。
明らかにやつれ始めた自分に、涙が零れた。
「何かあったんでしょう?僕でいいなら聞くけど?僕じゃなくても、手塚でも誰でも・・・。」
そう言って、指をくいっと向けた先には、心配しているのであろう仲間がこっちを見ていた。

こんな奴の心配なんて、してくれなくて善いというのに・・・。



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「俺は、海堂と別れたい・・・これ以上は踏み込めない・・・。」
「そう言って上げれば善いじゃない。別れてくれないか?って。」
「俺からふりたくない。あいつが俺を捨ててくれなければ、多分離れられない。」

そういって、乾は手を握り締めて震えていた。

「何をシテルの君は?」
「電話にも、メールにも答えてない。話しかける事も、目を合わせることもしてない。」

僕は今目の前に居るこの友人を、驚くほど冷めた目で見ていた。
侮蔑しているわけじゃない。
ただ、彼がどれだけ海堂薫を大切に慈しみ愛しているか、まだ未成年の僕だってわかっていたから。
溢れる愛を、惜しみなく注ぐ存在をこの友人は見つけたことを、僕は知っているから。

「かかってきた電話に、『カイドウ』と表示されるたびに、何度も受話器をとりたくなる・・・。送られてくるメールに『カオル』と表示されるたびに何度も読みたくなる。」
「読んでないメールは?」
「全て残ってる。未開封のまま・・・溜まっていくんだ。其れを見るたび息が出来なくなってくる。蟻地獄の様に埋もれて逝く自分が居るんだ・・・!恋焦がれてくる。海堂を強引にでもココに引き摺り落したくなる・・・!」

ああ、君は又、深い深い闇に落ち始めてしまったんだね・・・。
其の闇に、海堂と一緒に堕ちたくて、でも穢したくなくて・・・。

でも本当は彼のことなんてわかりはしない。
小さな彼に大きな闇があったことは知ってても、其れがどれだけのものかなんて僕には到底わからない。

でも・・・
でも其れでも・・・
「君は其れでいいの?何一つ知ってもらわないで、君だけは海堂を冒しておいて、ふって貰おうとでも考えてるの?」
「不二・・・」
「君の闇に海堂を触れさせたくないんでしょ?白くて穢れない彼を、君の真っ黒な穢れで汚したくないんでしょ?」
「・・・」
「否定も肯定も出来ない?いま、もし仮に君の願いが叶って海堂が君をふったら、君は壊れるんでしょう?すでに闇に呑まれて始めてるんでしょう?だから手放そうとして。じゃあ其の先は?」

「君の愛した人は、君の全てを受け入れられないような、そんなやわな人なの?君に何をされてもそれでも穢れないまま君の傍に居た彼は、そんなに信用できない?」

「飲み込まれた君を、捨ててしまうような人?」

「違うでしょう?足りない言葉を、他の方法で一生懸命紡いで、あの子はあの子で君を守ろうとしてる。」

「今でもほら、あんな遠くで僕を睨んでる」

「乾、是は最後の忠告。もし、彼が大事なら早く行ってあげて。彼、あと少しで倒れる・・・。」

そう言った途端、乾はいとおしい後輩の下へ走り去っていった。
ねえ乾。もし君がそれでも海堂から手放されたいなんて言ったら・・・。
僕は君の望みなんて叶えさせないよ。

君が海堂に殺してもらう前に、僕が彼を壊すから。










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なんか、ちょっとした懺悔。



20020927
今朋 獅治

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