不法侵入者ヲ発見。

俺ノ心ハ

土足厳禁



甘い侵入



麗らかに晴れたある九月の休みの日。全中も終わって部活は少し落ち着きを取り戻した。
だから、前ほどがむしゃらな練習日程も無くなり、休みの日は休める。
毎日は無理でも休日は互いの家を行き来して、こうして会える幸せ。
だけどごめん。
愛しい君が来ると知っても
俺はどうしてもこの部屋だけは片付けられない。



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「相変わらず汚ねぇ部屋…。」
散らかった部屋に通し入れると、お決まりな台詞を吐く。
「うん。片せないんだよね。自分の部屋だけは。どうしても。」
「ああそう。」
そっけない言葉しか返してくれない恋人は、俺にお小言をしっかり聞かせながらあっという間に散らかった部屋を片付けていく。
「何で片せるのかなぁ・・・。」
なんて呟けば、
「何で片せねぇのかの方が俺はわかんねぇよ。」
と返される。

ああ、この子のこの、綺麗好きな所が好き。
少々潔癖症過ぎるキライも在るけど、整理整頓のされたこの子はとても好き。

すっかり片付いた部屋を尻目に、
「この部屋に部長達あげてんのかよ…アンタ…。」
と言われてしまった。
珍しくそんなプライベートなことを聞くものだから、
「いや?この部屋に入って、ここまで片付けて、しかもしっかり落ちついてるのは君だけだよ?」
と、本当の事を言ったまでだ。

なのに何故そんな驚いた顔をするのでしょうね?この子は・・・。

「部長が、この部屋に入った事ないんすか…?」
「うん。まず、この部屋に俺以外の生きてる人が入る事がめずらしい。」
「ご両親は?」
「入ってこないよ。俺もあんまり入れさせないし。昔、突然入ってこられた時に、明らかに不機嫌な顔しちゃってから緊急時以外は顔も出さない。」
「まじ・・・?」
「まじ。」

ありえねぇ・・・

ぽそっと君が呟いた。
だけどね。困った事に在りえてるんだ。
今、まさしくこの場に。



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沈黙を打破する手だてなんてもの、無いことも無いけど。
そういえば昔「どうしても自分の部屋が片付けられない」といったら大石が教えてくれたなぁと思って
「部屋はね、その人の心の中なんだって。」
と口に出してみた。
「は?」
まぁ、当然の返答かな?
だけどなんとなくその肩を抱き寄せた。
「うん。だからね、俺の心はいっつも何かで汚れてるんだ。だから自室だけはどうしても片付けられない。」
「はぁ・・・。」
腑に落ちてんだか落ちてないんだかよく分からない表情をしながら、曖昧に、でもしっかり俺の話を聞きながら相槌を打つこの子が可愛くて。
「君だけだよ。君だけが土足で俺の中に入ってきた。土足で入ってきて、その足跡すら片付けた。だから諦めて俺が侵入を許したのは、唯君一人。」
「はぁ・・・」
されるがままの君を
「君が居ないと汚いまま。」
もっと強く抱き締めた。

「部長達には何で踏み入れさせないんすか?」
至極もっともな意見だ。でも、人一倍他人の心を気遣うあいつらだから、
「入れたくないって言うより、あいつらが入ってこない。変な所で気が利くから、入ろうともしない。『俺達は、お前の清掃婦になる気は一ミリも無い。』なんて言ってフラレタ。」

手塚の物真似をしつつ、そう教えたら少し憮然とした表情になった。
ああでも、少し赤いその頬は、好意の意だと受け取っていいよね?
「なんか、馬鹿にされてる気がするんすけど…」
「馬鹿にしてないよ。むしろ俺の部屋片せる君はすごいって。」

そういって口付ければ。今日の君はやっぱり抵抗しない。
この先を望んでも、今日の君なら許してくれる?

もうひとつ言うとね、折角君が片してくれても、君を考えれば結局また汚して片せなくなるんだよね。

この部屋の汚さは、
君への愛のバロメーター。

だから許して。愛しい人。



俺の心を汚すのは君。でも。片付けるのも君で。
知らぬ間に土足で上がりこみ、
気づかぬ間に痕跡すらを消してしまった。
今じゃあ靴を脱いで正座でちょこん。

だけど。
不法侵入を赦してなんかあげない。

このままずっと、心に捕らえて放さない










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昔ってところ、本気で中学生くらいのときって書いてしまった(もちろん消した)私は、乾を何だと思ってるんでしょうか・・・?
100歩譲って大学3年。100億光年譲って中3位?

珍しく(私にしては)あまっこい話でした(当社比)
薫ちゃんの部屋が綺麗なのは、
薫ちゃんが穢れてないからだと信じております。

誰か私の部屋片して下さい…むしろ嫁に来て…薫(涙)



20021102
今朋 獅治

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