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別離を選んだのは愛しすぎたから。
ねぇ海堂。 花が咲いてるよ? 枯れてしまうのに、枯れて行くと知っているのに、 花が、咲いてるよ。 どうして・・・ どうして咲くんだろう? 放棄した想いの花は、 それでもまだ、君を想う・・・。 君ヲ想ウ
「さよなら。海堂」 短くそう言葉を紡いだのは、大学入試を控えた時期だった。 「あんたの、重荷になる位なら…。」 物分りのいいふりをして彼を許した後輩の目は何も映していなかった。 「じゃあ。」 振り返ることさえ無い彼の背中に、小さく呟いた言葉は、何を意味していたのか。 知りようがなかった。 彼は。 彼らは、まだ幼いのだから。 自分の部屋に帰り着いて、彼は深い深呼吸をした。 「大事な時に、何やってんだろう・・・俺・・・。」 一人ごちた部屋には、痛い程彼との思い出が詰まっていた。 幸せだと心から想い続けた日々が、目に見えない何かに脅迫されるような幸福な想いの欠片が、整理できないこの部屋のあちこちに転がっていた。 「別れたからって、楽にならないのに…」 誰にともなく呟いた台詞は、頬に伝わる何かとともに消えて行く。 別れたくなんて無いんだ。 でも、何もかも思い通りに出来ると想えるほど子供で居られなくなってしまった。 現実を考えた時、恐れることなく前へなんて踏み込めはしない。 護りたいものを護るために、護りたいものを疵付けるなんて事はしたくない。 自分は、臆病になってしまったかもしれない、と彼は想う。 全ての人に、胸を張って紹介できる相手ではない。 例えば彼が、彼の愛した人が、互いに異性なら善かったのだ。 でも、出逢ってしまったのは、同じ性別だった。 間違ってると。 この想いは、きっと、間違えているんだと。 思い込ませれば善かったのかもしれない。 あの時、彼が彼を許さなければ。 そう、どんなに思ったところで、過去は覆せず、戻ってくる事も無い。 やり直す方法も無ければ、自分の道を、足掻いて行くしかないのだ。 いつか、笑って話せる日は来るはずだと。 彼はそう祈って 床についた。 このまま、死んでしまえばいいと思いながら。 一方的な別れを受け容れてしまった彼は、その場から離れる事も出来ず、 唯、其の頬に涙を流し続けていた。 追いかけることも出来ず。 涙を流し続けていた。 例えば彼が女だったら、今でも彼の隣に居られたのかもしれない。 無理に手折られたのは想いの花。 枯れたのではない。散らされたのだ。 彼に出来る事はもう無かった。意識の混濁。 其処から考えることをも放棄して、動く事すら手放した。 優しく包むように。 朝から寒かった其の日、初雪がちらちら舞い始めた。 何も無かったかの様に、其の雪は、白く白く、辺りを無に返した。 静かで優しい子守唄を。奏でていた。 雪、積もるのかな? 一人っきりの部屋でそう思った。 別れてすぐに降り出した雪に、なんと都合の善い事かと思ってしまうのも仕方ないだろう。 まぁ、ここら辺は大体今くらいに初雪が降るんだから、この季節何時降ってもおかしくは無い。 雪が騒音を吸収してしまうから。この辺はもとから閑静な所だというのに、さらに無音の世界となる。 誰も居ない家。明かりもつけない部屋。しかも傷心の男。 近くに在ったものを手放したのは自分。 泣きそうだった。 静寂を切り裂く無機質な音がした。 時間は夜の十一時を過ぎた辺りだった。 「乾先輩っすか?!俺です!桃です!」 深夜に近い浅い夜に、後輩から電話が入った。 「何?どうしたの、桃。」 「海堂が、帰ってこないんです!」 嫌な。嫌な予感がした。 「桃、元レギュラーにだけ伝えて。それと後一時間で善い、騒ぎを大きくしないでおいてくれ。」 そう言うや否や電話を切った。 急いでコートを羽織って、別れた場所へと急いだ。 ++++++++++ + ++++++++++
*久しぶりにお話書いたら、あまりにも長くなって途中で切ってみました。 あれです。(どれ?) 成り行き任せに書くと話が纏まりません。困った・・・。 一体話が何処に流れ着くかは、実は私にも見えてません。 多少のプロットは立ててあるんで、まぁ、其処からどうなるか…。 多分べたべたな話になるんや無いかと。 お付き合いくださればありがたいです。 20021127
今朋 獅治 禁 無断転載 |