欲しい物はその光。
貴方を初めて見た時から、惹かれていたのは其の目映さ





目撃






「越前、帰らないのか?」
「部長待ってるんす・・・。」
「手塚、もうしばらく帰ってこないと思うよ?」
そういった俺を睨むこの後輩は・・・。
「越前、俺睨んだって仕方ないデショ?」
「うるさいっすよ。乾先輩。」
何だかねぇ。この荒れ果てた後輩は。
あの時の食い入るような目の越前は可愛かったのにな。
・・・うん?右側から痛い視線が・・・
「・・・浮気もの・・・」
「違うよ海堂。小さすぎて越前じゃ俺の相手できないから。俺の相手は海堂だけだよ。」
そう耳元に囁けば海堂は顔を赤くして俯く。俺の袖を握ってるところを考えると、今日はお持ち帰り可だな・・・。
何のために君の左側キープしてると思ってんの?
「どうしたらそうなるんすか?」
「「は?」」
あまりにも唐突な質問に俺たちは素っ頓狂な声を上げてしまった。
「どうしたらそんなにむかつく位仲良く成れんすか?」
「むかつくくらいって・・・」
ああもう、目つき悪くなってるよ?海堂・・・
「越前ちょっと・・・。」



++++++++++ + ++++++++++

「じゃあ、合い鍵は此処に置いといてやるから。健闘を祈る」
そう言い残して乾先輩と海堂先輩は帰っていった。
真っ暗な部室。ベンチにじっと座って待つ

かちかち煩い時計の秒針。

かちかち響く度に、思い出すのは部長の事。

何度盗み見たか分からない。彼の姿。
俺の存在を認めさせたい。その他になんかさせたくない。
俺というものを、刻みたい。刻まれたい。
唯、同一の立場に。同じ場所へ。むしろ、高みへ―

・・・処で、俺は一体後何分。此処で待ってればいいわけ?
なんて、自分で待ってて言う台詞、虚しすぎだからさ。自分。
待たされるのが嫌なんじゃない。
唯、俺がこんなに想ってる時間も、あの人は一ミクロンも俺を想っていないという事が嫌なんだ。
独り善がりの想いなんて、俺じゃない・・・。



++++++++++ + ++++++++++

遅くなってしまった・・・。
何でコンナにやる事が多いんだ?この学校の生徒会は・・・
そうぶつくさ思いながら部室に戻った。
真っ暗になった部室は、多分誰も残ってないのだろうと思う。
何で俺は生徒会長なんて引き受けてしまったんだ・・・?



「やっぱり皆帰ったか。」
がちゃりとあけた部室には誰も居ない。部誌を書かなければならないから戻ってきたんだが、こんな時間なら家で書いてしまった方がいいだろう。

暗い暗い部室。

ぱちっと電気をつければ、誰も居ない筈の部室に人影があった。

「其処に居るのは誰だ!部外者は出て行け。」

「俺は関係者だよ。手塚国光部長。」
其処には、まだあどけなさの残る少年が居た。
「越前…。」

「俺はあんたが此処に来るのを待ってた。話があるからちょっと付き合ってよ。先輩。」
「今じゃなければならない話か?」
「今じゃなきゃいけないって事はきっと無いよ。でも、それじゃあ今まで待ってた俺が馬鹿みたいでしょう?」
ふぅとため息をついて近くにあった椅子に腰を下ろした。
「其れで?」
「こんな時間迄残っててさぁ、俺が何言いたいか見当も付かない?頭の固い人だね。本当は分かってんじゃないんすか?」
「わからんな。」
そう答えれば、あっそう。とだけ言って不敵に笑った。



++++++++++ + ++++++++++


あっそう。とだけ言って無理やり笑う。
「ねぇ。」
「なんだ。」
「全然関係ないんだけどさぁ、アンタ何時から吸ってんの?」
一瞬貫かれたと思った。刺すような視線に、殺されたと思った。
「知られて無いとでも思ったの?せ・ん・ぱ・い。」
この瞳に、気圧されてはいけない。本能がそう叫ぶ。
今逃げたら、多分、もう、微塵も隙等見せてはくれない
「何が、望みだ・・・。」
チャンスは、是だけ。
「ふーん。物分り善いんだね。アンタ。」
「そうでもないさ。今だって、無駄に悩んでる事があるくらいだからな。」
だから、
「そう。」
「其れで?」
「何が?」
「お前は秘密を握って俺に何を求めるんだ。」
どんなことをしても、手に入れてやる。心は、後からでも着いてくればいい。
「アンタ。」
そう即答したら、目を見開いて止まってしまった。
「何・・・?」
動き出した暴走。
「俺はアンタが欲しい。ああ、でも安心してよ。俺が抱かれる方で善いから。そうと決まったらさっさとしよう?」
あと一歩の距離。
「越前?」
もう、俺はあんたの胸の中
「邪魔するものは、アンタの其の理性だけなんだから。俺は、アンタが好きだから。俺が口滑らす事も出来ない位、アンタで俺を縛ってよ。」
耳元で囁く言葉に、アンタも酔ってよ。



++++++++++ + ++++++++++


何時だっただろう?
窓から見た彼は、酷く強く見えた。
其の身に纏うものが、眩しく見えた
気が付けば目で追う毎日。



生徒会室には現在三名。生徒会長の俺と、庶務の乾と海堂。
勿論手伝ってもらう事も多いが、ただ、聞きたかっただけかも知れない。
「乾。越前のこと、如何思う?」
「また唐突だね。面白い逸材だと思うよ?誰よりも強いのに、誰よりも高みに近いのに、酷く不安定だ。」
きっぱりそう言った乾に対して、
「不安定ってどういう事ッすか?先輩。」
と、海堂が質問した。
「うん?何ていうかね、彼は指標は在るけど、明確な目標が無いみたいなんだよ。それでも、指標が大きいんだろうね、それで彼が困る事は今の所無い。彼は強いよ。誰よりも。でも、誰よりも弱いんだ。」
「小難しいっす・・・。」
「うん、つまりね。彼は俺たちよりも土台が脆いんだよ。何かじゃなくて誰かだから。俺の目標は何より強くなることだ。其のための課題として手塚や不二がある。」
「あいつは、指標が無くなったら・・・。」
声は少し震えていたかもしれない。
「才能を潰すだろうな。そこで終わる。」
絶望と嫉妬。折角見つけた愛しいものを、其の手に掌握している彼の父親。
「父親を超えたら、もう、終わりだ。GAME OVERだよ。だから誰かが・・・」
「え?」
「誰かが、其の先を見せてやら無ければならない。リスクを伴うけど、誰かが彼に目標を見つけさせなきゃ為らない。」
「誰が・・・」
「誰が?って、もう一度聞くの?手塚。」

吃驚して顔を上げると、酷く切なそうな親友の顔があった。
「越前を、本当に倒せる奴がやらなきゃ、見せてあげられないでしょう?越前を、本当に思う奴がやらなきゃ、壊しちゃうでしょう?例えばもし、俺が越前に勝てたとしても、俺ならあいつを壊すよ。自分の前に立ち塞がる可能性が大き過ぎるから。目障りな芽は、早々に摘んでしまおうとする。」

「お前は?」
「・・・」
「お前は越前を如何思ってるんだ?手塚。」
「俺は・・・俺には、眩しい存在だと思ってる。でも・・・俺はあいつの目標を作ってやりたい。あいつの前に道をつくってやりたい。多分きっと・・・」
好きなんだと思う。
「やっぱりな。お前が、惹かれないわけ無い。早いうちに、掴んでこい。報告、待っててやるから。」



+++++++++ + ++++++++++


「やっぱりな。お前が、惹かれないわけ無い。早いうちに、掴んでこい。報告、待っててやるから。」

そうは言われても、自分からはけして掴む事など出来ないと思っていた。
光なんて曖昧なものは、永遠に手に入らないと思っていた。
其れが今、向こうから飛び込んできた。

「邪魔するものは、アンタの其の理性だけなんだから。俺は、アンタが好きだから。俺が口滑らす事も出来ない位、アンタで俺を縛ってよ。」

其れからは、ただ越前から俺を求めていた。必死に、俺にすがり付いていた。
「俺は、あんたが好きなんだ」
とうわ言の様に呟きながら、自分と俺のモノに這わせた指を動かし続けていた。
俺の上で、拙く、それでも一生懸命扱いていた越前の動きが止んだ。

ぽたり

と越前の涙が零れてきた。
「あんたは俺が嫌いなの?ねぇ、どうしてアンタが泣くんだよ!」
泣く?そう言われて、初めて自分が泣いている事に気が付いた。
「そんなに嫌い?じゃあ、もういい!俺は絶対にあんたの秘密なんか誰にも言わない!だからきっぱり言ってよ!俺をふってよ!二度とあんたを目で追わなくても善い様にさぁ!もう、もう、俺に期待なんか持たせんな・・・。」

違う・・・違うんだ越前・・・

抱きしめた其の身体は、予想以上に小さかった。
「俺は・・・俺も、お前が好きだから。違うんだ。誤解しないでくれ・・・嬉しいんだお前が・・・」

お前が俺は見つけてくれて・・・。

「なんだよ・・・だったら最初っから両想いって奴なんじゃん・・・俺、ヤラレ損じゃん・・・。」
「まだ、挿入れてないだろうが・・・。」
「まぁね」

初めて、唇に触れた。
其れは誓約の証。俺が責任持って、彼を前に進めるための。

+++++++++ + ++++++++++


「越前ちょっと・・・。」
「なんすか?乾先輩。」
「お前に善い事教えてあげるよ。」
「善い事・・・?」
「そんな不審がるなよ。大丈夫。とっておきだ。」
それでもまだいぶかしむ後輩の耳元に低く囁く。
「好きな奴口説き落とすなら、左耳からにしろ。感情を司る右脳にダイレクトにいく。」
「なっ!」
「いい例だったろう?」
口の端がつり上がるのが分かる。大切な後輩が、こっちを睨んでるのも分かってる。
それでも、不器用な彼らには幸せになって欲しい。

まさかねぇ、手塚の話し聞いた後に、越前からそんな話聞くとは思ってなかったし。

「さて、分かったかい?越前。」
「・・・うっす。」
「じゃあ、合い鍵は此処に置いといてやるから。健闘を祈る」

外はもう暗くて、海堂は怒ってて、俺は機嫌がよくて。
「ごめん海堂。妬いてくれた?」
「っけんじゃねぇ!誰が!」
凶暴な恋人を持つとちょっと大変だけど、其れすらも愛しいからね。
「まぁどっちでも善いよ。俺が海堂好きなのは変わらないんだから。」
左耳から囁いて、君は真っ赤になって困ったように微笑んだ。

「早く帰ろう、海堂。でも、ゆっくり、歩いて帰ろう。」
「どうしたんすか?先輩。なんか、すっげぇ嬉しそうな顔してる…。」
「ああ、近いうちに雨が、降りそうだから。」
「雨・・・?」
「そう。雨。幸せの雨。俺たちみたいに。」
「そうっすね、あの二人も、雨が降って、地面が固まれば善いっすね。」

俺たちは、その目撃者には為れなかったけど、多分、きっと、全てが旨くいく。
あの日から。
目撃された日から、きっと、そういう運命だったのだから。










++++++++++ + ++++++++++


おいおいおいおい!〆は乾かよ!
見たいな感じで終わりました。塚リョ馴れ初め『目撃』。難産でした・・・。
色々な話と噛み合わなくて、試行錯誤しました。がはん(吐血)
取り合えず、この時点ではリョマさんバージン(笑)
キリリク小説のどれか(オイ)に、「好きだと言う言葉と共に彼は少年に求められた。」
っていう件があるんですけど、なにも「身体を」とは言ってないので、OK!もう全っ然OK!!

基本的に全ての話が繋がるよう矛盾しないように書いてるせいで、今回は死に目に会いました。

是で目撃は完了っす。やっと日の目に出す日が来て、本当よかったです☆
続きを楽しみにしていてくださった方も、本当に有難う御座います。



20021130
今朋 獅治

禁 無断転載