願いは唯一つ

其れは 罪深いことだとしても





君たちに出会えたキセキを

いっそ 忘れてしまいたいと思うのは

俺の我侭(エゴ)でしょうか?











キキュウ
















日常というものほど厄介なものは無い。



いつなんときボロを出すか分かったもんじゃないカラ。



バレテはいけない。



俺を。隠して隠して、果たして何を得るというのか・・・?



きっとそんな事ぁ考えちゃいけない。俺は俺の仕事をしなくてはいけない。



そう、ココに居る理由を忘れてはいけない。



ココに居る、理由を・・・





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T 太陽ト月



@ 君達ノコト




「何してるの?コート整備終わったんでしょ?帰らないの、海堂君。」

物思いに耽っている俺に声を掛ける。後ろから、知らぬ間に・・・。怖いからやめて下さい・・・マジで。俺、いつかこの人に殺される・・・。っていうか俺のこと嫌いでしょう・・・?



「いえ・・・。まだ帰ってこないんで・・・。」

答えて椅子に座る。

「そう。」

と言いながら俺の向かい側に座る。

「不二先輩は帰らないんすか?」

「うん。タカさんも帰ってこないから。」

そういって静かに微笑んだ。



其れは何時もと変わらない光景。此処に来て二年間。



一人で待つ時間は長い。だけど、俺があの人を待つときは、絶対に誰かが一緒に残ってくれる。鬱陶しくない優しさで。

他愛も無い話をして、時々恋愛について語って(不二先輩か菊丸先輩と残るときは)、

「是は君には教えられないな。」

なんて、途中まで言って教えてくれなかったり。そんな事をしていると、「遅くなってすまん」と言いながらあの人は近づいて来る。

「いえ。不二先輩も一緒だったから。」

今まで闘っていた素振りを微塵も見せないように俺が言う。

でも、やっぱり気になる話の続きにむ〜っとしてあの人に泣きついてみる。

「先輩・・・。不二先輩が俺に教えてくれないっす。」

「ああ・あれはねぇ・・・。仕方ないよ、海堂。」

?!あんた知ってのかよ?!・・・知らないのは俺だけかよ・・・!!

こういう時、年下はなめられるなぁとか思ってしまう。っていうか、この二人が組むと、性質が悪いから嫌だ。



何だかちょっと悲しくなりつつも、折角だからと河村先輩を待つ。

「遅い・・・」

と、俺を構うのにもそろそろ飽きたのか、あの人が悪態をつく。淡々とした調子で言うから、怒ってんだか分かりづらい。

そんなこんなで、もう直ぐ七時に成る頃、ようやく河村先輩が来た。

「ごめん!遅くなっちゃったよ!」

「遅いよ・・・タカさん・・・」

何て嬉しそうな顔で言う不二先輩を、可愛いと思った。羨ましく思った。



皆が揃ってやっと帰る。楽しくてしょうがない日常。

こんな楽しいのは生まれて初めてだったから。

だから出来ないのだ。俺には。研修を終わらせる事など。帰る事など。出来は・・・しない。



このまま忘れてしまいたい。研修の事など。

誰も傷つけることなく、此処に居つづけたい。

どんなに親密になっても嘘を吐き続けなければならない。

其れが俺に課せられた罪と罰なのだから。苦しいのは自分のせいなのだ。



もし皆にばれてしまったら、俺は如何為るのだろう?

冷徹な目を向けられるのだろうか?もう、仲間では・・・恋人では・・・なくなってしまうのだろうか?

心は、死んでしまうのだろうか・・・?



考えたくない。

から、今は目を瞑ってしまおう。俺は此処に来て温かいものを手に入れた。

今だけは寄り添っていよう。

いずれ来る、終焉の刻まで。





「どうしたの?海堂?」

心底心配そうな顔で覗き込んでくる二つの眼に、俺は嘘を重ねた。

「え?何でもないですよ?ただ、走りたいなぁって・・・。」

そうか?ってしぶしぶ納得してくれたあの人の後姿を見つめていたら。

ぽん。と。

河村先輩と不二先輩に頭をはたかれた。表情からは何も読み取れない。只、其の手は暖かかった。

あたたかかったのだ。



涙は見せてはいけない。笑え・・・笑え・・・!



帰る路はとても綺麗だった。何処までも澄んだ空には月が存在を誇示し始めていた。



夕暮れの空に、俺は、笑った。



今日も一日楽しかったと。今日も一日俺は居れたと。今日も一日皆と笑えたと。