そうやって、見えないフリをしてればいい





COLORS



「善いよ海堂?君の好きにして。君を縛るものは何一つとして、もう、ない。」



そう言い放ったあいつの顔のその顔といったら。

その顔といったら・・・。

「俺が・・・アンタを捨てるのか?アンタが俺を捨てるのか・・・?」
「君が想う方で善い。」
「どうして・・・」
「・・・何も・・・見えないから・・・」

不意に手を離された気がした。
急速に色が失われた気がした。





++++++++++ ++++++++++

「ねぇ海堂?何かあった?」
「菊丸先輩・・・何もないっす。そう、何一つ・・・無いんです・・・」
「海堂?」
「・・・何でも・・・ないです・・・。」

そう。と呟いた先輩の顔は、少し悲しそうだった。

ごめんなさい。

心配をさせているのだと思う。 条件的に後輩に甘いこの人は、俊敏に俺の気持ちに気が付いて。
それでも、言葉にすら出来ない想いだってあるのだ。

ただ、無条件に。言葉に出さないだけで、先輩たちは、俺を案じてくれているのだ。
とても、心地よい、残酷な居場所だと思った。





孤独を、知っていた。
少なくとも、一人で立っていた。
いつから、立てなくなった?
支えを、必要とした?

たった一人、がむしゃらに走れば走るほど、何も見えはしなくなっていく。
色が無くなっていく。それは快感なんてものではない。
寂しいと感じるだけだった。

何も分からず手放された手を、必死で掴もうとした。
形振り構わず触れた手から、全てを掴んで奪おうとした。
本能が、傍に居なければ何一つとして見えはしないと知っていたから。
すでに、鮮やかな記憶が。次第に靄に罹っていっていた。



手探りの恋慕は、手放されて終わる為にしていたんじゃない。

幼稚で、たどたどしい想いも、全てを、許容してくれていた。
幼いと、けして罵倒しないで居てくれた。

でも、それら全ては、嘘で塗り固められた事だったのだろうか?





++++++++++ ++++++++++

呼び出された数日前。

そして、呼び出した今日。



した事も無い誘いだし。
選んだ場所は、寄りかかってしまう安らぎを覚えたあの日と同じ木の下。
アンタは、赤に反応する闘牛の様に、俺に反応するのだろうか?
二度目の呼び出しに。
応じて訪れたあんたは、非道く焦燥していた。

「乾センパイ・・・」

呼んでも、視線が此方を向かない。少し腫れた眼の下は、俺も同じ。
先に焦れたのは、アンタの気持ちだ。先に音を上げたのは俺の心だ。

「俺は、アンタにとって利用価値のないものですか?」

単刀直入の切り出し、やっと絡んだ視線。
通用しないのなら、派手なマントを振ったって滑稽なだけだ。

「先に手を放したのは俺かもしれない。でも、そう仕向けたのはアンタでしょう?」
「そうかも・・・しれないね。だけど、海堂は要らないでしょう?俺なんか。だったら、嫌いになって、わかれた方が懸命だ。」
「俺は嫌いになんてなれないのに。それに、俺がアンタを要らないんじゃない。あんたが、要らないと思ってるんだ。俺の存在を。」
「そんな事無いよ。海堂は強いから。俺はいつか切り捨てられる。」
「強くなんて無い!弱くなんかなりたくない!でも、何も知らないフリしてられる程、俺は強くも弱くも無い!」
「・・・海堂、が眩しすぎて・・・」
「俺から、何も見えないんですか?想いの欠片も見えないんですか?クリアな空にはなれないけど・・・!アンタの望む通りのものには見えないかもしれないけど・・!」
「・・・」
「見れねぇんなら作りもんでも善いじゃねぇか!なぁ、諦めんなよ俺を・・・!!・・・違う・・・俺に・・・俺に諦めないで・・・下さい・・・」

敬語もあったもんじゃない口調でも上下関係を深く気にする人じゃない。そして、泣き落としが効く相手じゃあない。それでも零れた涙。
効果なんて、気にも留められない。

「・・・」
「いいんですよ・・・ダメなら何度だってやりなおせるんだから・・・」

「海堂・・・」

「自分だけ白い旗振り上げて、逃げ道作って、自己完結なんてすんなよ・・・」

「・・・薫・・・」

「俺は、アンタが思うほど、もう、強くないんだ・・・この木の下で、あんたを頼って、もう、其の幸せを手放せないんだ・・。」

マントを、上手く翻せたのだろうか?
生来演技なんて出来ない、自分の、本当の想いに泣かされて。上手く、誘い出されてくれたのだろうか?
何一つわからないまま、静かに通り過ぎた風が、体を、濡れた頬を、冷やしていくだけだった。










傍目には、仲睦まじく見えるのかも知れない
騙してるわけでは無いけれど。





でも、隣で微笑むこの顔は、「俺」に向けられたものじゃない。

もう、俺はあんたの知ってる俺じゃないから。
進化して、俺は先を目指す。
だけど、過去の俺達に縛られるあんたを連れてはいけないから。

何も、見ない振りをしてれば善い。
真実も、何もかも、其処に置きざって



其処に居るのは愛し愛された日々の記憶の中の俺



手放せないのは、俺だって一緒だ。










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リクがCOLORS@某歌姫(笑)をイメージした乾海小説だったのですが、
ちゃんと聞いたらある意味別れの曲でした・・・!
何か違うような・・・あれぇ・・・?



2003
今朋 獅治

霜月 貴姫様
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