桜の咲く四月。
それが始めての出会い。
とってもとっても優しくって、
とってもとっても頭の固い奴だった。

なんだか面白みの無いやつだなぁ・・・
なんて思ってたんだ。
ウン本当に。

だけど、なんだろう・・・?
何かすごく・・・気になるんだ・・・。



桜の咲く四月。
それが始めての出会い。
とてもとても明るくて、
とてもとても騒がしい子だった。

なんだか胃が痛いなぁ・・・
なんて思ってた。
冗談じゃなくね。

だけど、なんだろう・・・?
なぜかすごく・・・気にはなった・・・。



桜の咲く四月。
それが始めての出会い。
とってもとっても暖かくて、
とってもとっても気の弱い人。

なんだか可愛い人だなぁ
と思った。
すごくね。

だからすぐに、
心が引かれた。



桜の咲く四月。
それが始めての出会い。
とってもとっても華やかで、
とってもとっても怖い人

だけど、すごく綺麗で、
其の全てにどきどきした。
心から。

だからすぐに、
心が魅かれた。



桜の咲く頃に



〈version 大石・菊丸〉

「いったー!!!」
部下中、慣れないラケットをぐるぐる回して、菊丸は頬にかすり傷を作った。
常に明るいムードーメーカーの彼が怪我をしたということで、皆は心底心配した。
「大丈夫?菊丸君・・・?」
怪我をした菊丸に一番先に放し掛けたのは、部内一気配り上手の大石秀一郎(多分12歳)。
「痛い・・・」
と口を尖らせて訴える菊丸に
「痛いって思えるなら大丈夫だよ」
と言って優しく丁寧に手当てをした。

「大丈夫?英二?」
と手当ての終わる少し前に彼の幼馴染の不二周助が駆けつけてきた。
入学以来めったに開かれない其の瞳は、見たものを塵にさせる力があるという噂がまことしやかに囁かれている。(あながち嘘でもない)
そんな噂を真に受けてるわけじゃないが、大石秀一郎(12歳)は不二と、そんな彼を幼馴染に持つ菊丸を、少し敬遠していた。
それでも良い人の仮面を付けている彼は、どんなときでも全ての人に公平に付き合う。

去って行く彼の後姿を見ながら、菊丸は悪態をついた。
「大石って何かうそ臭い・・・。」
「・・・英二・・・仮にも手当てしてくれた人にそんなこと言うもんじゃないよ。」
「だけどさぁ、不二だってそう思わない?!なんか胡散臭いんだよ、あいつ。」
あながち間違っては居ないけど・・・と、大石は思った。でも、そういうこと本人が未だ去りきってないときに口に出すかなぁ・・・とも思っていた。



大石秀一郎。
家は代々医者や弁護士等を輩出している、結構優秀な一族の長男。
お陰で彼は処世術として誰にでも優しく公平で立派な人を演じてきた。
背負わされる物は大きく、潰されない様に生きているこの少年は、案外黒い人なので、裏では色々していた。
まぁ、法に触れる事はあまりしていないが。せいぜい飲酒喫煙ぐらいだ(十分悪い)

そんな彼だから、誰かが悪いことをしてたら注意する。自分のことは棚に上げてるが、まぁそれは其れで良いのだ。

だから勿論、同じ部活の人間が煙草なんざ吸ってたら、優しく諭すのだ。
「そんなものこの歳から吸ったらダメだよ。」
と。そう、普段なら間違ってもぼろは出したりしない。



何故あの時だけは挑発に乗ってしまったのかは、今もって不明である。

ぷかぷかと浮かぶ煙を発見したのは、桜の散りきる少し前だった。

「こんなトコで誰が吸ってるんだい?」
そう善いながら死角で吸っていた人の元へと向かった。
「・・・」
「・・・」
其処には、部活では皆に好かれる、菊丸の姿が在った。
「何吸ってるの・・・?菊丸君」
「マルメン。」
そんな事は聞いてない。心底そう思ったが、あえてそれを彼は口にしなかった。
「うん、それで。何でこんなトコで吸っての?体に善くないよ?」
「ココ気に入ってるから。っていうか、そんなに目くじら立てないでよ。大石もしかして吸えないの?だから怒るんじゃない?」
いつもならきっと、彼は軽くかわしていたのだと思う。それでも彼は、今日だからなのか、相手のせいなのか、静かに切れていた。
「・・・寝言は寝てから言えよ・・・馬鹿・・・」
伸びてきた腕に、静かに自分を見下す目に、菊丸はぞくりとしていた。
ああ、ほらやっぱり・・・彼は仮面をつけていたのだ。
他の人は気が付かない程彼の仮面は完璧だった。
その彼の仮面が外れたのは見るのはコレで二回目。はっきり見たのは始めてだった。

本当は。知っていた。彼が見かけ通りの優等生でないことくらい。

一年生ながら部室の鍵当番を任される彼は、勿論誰よりも早く其の部室に行く。
其のことは多分誰だって知っているはずのこと。

ある日、菊丸は、どうしてかわからないが、いつもなら絶対に来ないはずの時間に部室にたどり着いた。
未だ誰も・大石さえ居るはずの無い時間。
朝の空気が気持ちいいと、少し上機嫌で部室へ向かった。

なんとなく覗いた窓の向こう
彼は其処に居た。
冷たい目をした優等生が、ただ何をするわけでなく、ゆっくりと紫煙を吐き出していた。

其の後、彼が吸い終わって、何食わぬ顔をして入って行った菊丸に、
「おはよう」
と彼は優しく言った。
菊丸はそれが酷く切なかった。

頬に怪我をしてくれた時だって、アレだけ悪態をついても仮面が剥がれる事は無かった。

其の彼が、今自分の目の前に居る。
あれだけ会いたかった本当の彼が。
「何コレ・・・軽い・・・それにスースーする・・・」
普段吸わないメンソールを吸った彼は、そうこぼして眉間に皺を寄せていた。
そんな彼の指から煙草を奪って菊丸は其の煙草を口にした。
肺に満たされるのは、煙じゃなくて其の心。

気付いたときには、其の唇を重ねていた。

拒まれる事の無かった其の唇は、温かかった。

「なんで?」
「好きだから。」

「・・・」
「大石の本性見るのはコレで二回目。俺は大石の其の眼が好き。冷たい目。其の眼で見られるとぞくぞくする。」

「俺が好き・・・?」
「うん。全てひっくるめて大石が好き。」

「寝言は寝て言え・・・。」
そう言って菊丸に触れた其の唇は、酷く優しかった。
力の入った指が菊丸の顔を傷つける。
血の滲む顔が、より一層卑猥で・・・。

コレは所有印なのだと。菊丸は思った。
誰にも見せたくない幸せの証。コレはバンソウコウで隠して。

貴方の其の目は俺一人のもの。

本当は始めてあったあのときから、
彼らは互いに惹かれていて。

それを伝える暇がなくて。

だから正反対の彼達は、魅かれあうのが運命だった。

磁石のように、其れが真実





〈version 河村・不二〉

三度目の桜を見たときだった。

桜の下、彼は彼に呼び出されていた。

始めてあったとき、其の目はすでに囚われていた。

「遅くなってごめん。」

そういった彼の其の瞳。

酷く艶やかだったのを、彼は今も覚えていた。

何故呼ばれたのか皆目見当も付かない。

見ていたのがばれたのだろうか?

気持ち悪いと、罵られるのだろうか?

生来自分のことになるととたんに弱気になる彼は、いつもより更に眉毛を垂れ下げていた。

「ねぇ・・・。」

「え?!何?!」

「僕は君が好きなんだ。」

「え?!」

「好きだって言ったんだけど・・・?」

もう一度繰り返す彼に、彼は茹で蛸よりやばいんでは無いかと思われるくらい真っ赤な顔をした。

「君は否?」

そう泣きそうに聞く彼に、

「そんな事あるわけ無い!!!」

と、力強く返した。



自分から、好意を寄せたことなど無かった。
酷く人を嫌っていた。
近づくものを敵だと感じていた。
この学校に入って、今まで出来なかったことが、出来るようになった。

仲間を持ち、
其の仲間を信じきる。

当たり前のことが出来なかった自分を、
救ってくれたのは彼の笑顔。
暖かい其の笑顔は、冷え固まった其の心を、いとも簡単に融かして締まった。

二年かけて、ゆっくりゆっくりと融けていく心は、怖くて温かい時間だった。

だから今日。常春のような君に、潔き散り行く桜の下で、君に勇気を出した。

「ありがとう。不二」



コレが、彼らのスタートライン。










***

大菊・タカフジの馴れ初め・・・馴れ初め?
みたいな感じで・・・
このあと、タカフジには色々起こりますが、(恋する〜参照)
結果オーライなので、勝手にして欲しいところです(おい)

わかった事は、菊はマゾかもしれない・・・という事。



2002
今朋 獅治

椎葉様
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