俺の家に届いたものは、花の無い茎と葉だけの一本の薔薇。

そして・・・―――――――

一枚の手紙。





「手塚!!!」





俺は間に合うのだろうか?



無二の親友を

大切な後輩を



是しかない情報で、俺はココに連れて帰れるのだろうか?



それよりも・・・

俺は、こいつらを連れてきて善いのだろうか?

俺もいつか、この手で同じコトを犯してしまうのではないだろうか?



ばさっ

と手紙を取られた。

「何してんすか。手塚先輩と越前連れ戻しにいくっすよ。乾先輩。」

敵わないと思った。弱い心を勇気付けてくれる彼に。

「わかった。其処ならバイク飛ばして1時間ちょっとか・・・。海堂、俺運転するから、お前皆に連絡して。」

「はい。」





折られた華。自ら望んで堕ちていく






「ココ・・・何処?」

頭はがんがんするし身体はうまく動かない。

「気が、付いたか?」

・・・あんたか・・・

「一体何?」

こんなことして。



俺の首には手には、脚には。

拘束具が付いてる。

じゃらりと重い鎖。

「監禁ってやつっすか?部長?」

恋人にするには随分過激じゃない?だからつい、俺の目線だってきつくなった。

「俺は、お前を誰にも渡したくないんだ。誰の目にも触れさせたくない。誰も許せない。お前が見るもの全て。お前を見るもの全て。」

「何其れ・・・」

「壊れてしまったんだ俺は・・・。だからここに居て欲しいだからココにきて欲しい・・・。もう、放したくないんだ・・・」



空ろな瞳で放したくないと。言われた俺は、其れを承諾してしまった。

このまま二人で堕ちるトコまで堕ちてしまえば。いっそ、自ら堕ちてしまえば、其れは案外楽かもしれない。

ただ・・・。

「あんたが壊れたのは俺のせい?それとも他の人のせい?」

それは、この世で一番大切なこと。

「お前の、せいだ。」

「そう。」

それなら善いんだ。あんたが壊れた理由が俺にあるなら。俺を壊す理由があんたにあるなら。

何を笑ってるんだ?と聞かれて、やっと笑ってることに気づいた。

アア、俺笑ってた?

「嬉しいから」

って答えたら、強く抱きしめられた。

「すまない・・・」

と言われて、俺はやっぱり笑っていた。

「越前・・・」

何?と答える前に、口は動くことを忘れた。

触れてきた唇に、俺は答えていたから。



俺を溶かす口付けに、俺はどこまで耐えられるだろう?

俺を試す其の目に、俺はどこまで答えられるだろう?



触れていた唇が離れて行って。俺は、寂しさを感じた。

「あんたを感じたい。もっと。ずっと・・・。」

「だったらこのまま。俺のトコまで堕ちてこい・・・」

「あんたが、俺の手を握っててくれるんなら・・・。」

「ああ。」





バランスを失った二人は堕ちるしかないんだ。

其の先に幸せが見出せなかったとしても。

離れる苦痛に比べれば・・・。

だから。

もし、誰かが俺達を見つけたら、きっと、もう・・・。






着いた先には、身体を鎖で拘束された越前と、其の越前の手をしっかり握った手塚が居た。

ああ・・・遅かったのかも知れない。



「壊れてる・・・」



誰に言うでもなく。海堂がポツリと呟く。



其の言葉は虚空に消えた。










***
ちょっとした余興



2002
今朋 獅治

越前海璃
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