泣かないで泣かないで



俺は傍に居るから・・・










るえて眠れ



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何一つ変わること無い日常に 発作のように起きた恐怖心。

全てを失う日が来るかもしれない。

誰一人振り返りはしない

自分がどれだけ汚れて頑張っても 反応が無い虚しさ。

無に還される熱情が、いつしか独り善がりと責められる。



不確定ながいつかが。訪れるかもしれない未来が。





・・・こわい・・・










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理由など無く、乾先輩の家へ行くために其の日も一緒に帰った。

何一つ変わらない日常で、少し違ったのは。

会話が無かったことと、俺の手を握る其の手が、いつもよりも強かったことくらいだ。



辿り着いたからといって何をするわけでもなく、ただ傍に居るだけ。

ふと見上げた先にあったのは、今にも泣き出しそうな、そんな先輩の顔だった



この人の、こんなにも辛そうな顔を見たことなんて無かった。

いつでも余裕そうに、年長者として常に俺を優しく見ていた。



「乾先輩・・・?」

呼ぶと其の身をびくりと振るわせる。

ベッドに腰掛けた先輩に

床に膝をついた俺は、

緩やかに自分の手を先輩の頬へとすべらす。

「海堂・・・」

怯える其の眼を

愛しいと思った。

でも

見ていたくはなかった



「・・・どうしたんすか・・・?」

と訊ねても

「なんでもない」

と答えるだけだった。



何も出来ない。何も聞けない。ただ、頬に置いた手が、少し濡れた。

溢れる涙が気になって、すっと立ち上がり先輩の脚に跨った。

手は先輩の首へ回して、零れる涙を舌で掬い上げる。

伏せた瞳からそれでもこぼれ続ける涙を、猫のように、ひたすら舐め続けた。

腰へまわされた腕は、微かに震えていた。



どれだけの時間そうしていたか分からない。

声も出さずに静かに泣き続けた先輩は、いつの間にか眠ってしまっていた。

起こさないように静かに身体を横たえさせて、俺はベッドへ座りなおして、ゆっくりと其の頭を撫でた。



先輩が起きるまで、ずっと傍でこうしていようと思った。






「全てをぶちまけて、其れでアンタの気が済むなら、綺麗になれるなら俺は何だってされてやる。

この身全てを自由にしていい。だから、俺にもアンタの背負うもの、少しは持たせろよ・・・

アンタが何をしても、どんな時でも傍に居るから。絶対に見離したりしねぇから・・・。」










例えこの言葉がアンタの耳に伝わらなくても





辛くなくなるまで 俺がアンタをつつんでやるから





ふたたび起ちあがる其の時まで





このまま ココで










ふるえて 眠れ










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2003
今朋 獅治

霜月 貴姫様
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