外は雨が降っていた。



心は嵐が吹いていた。



身体は陵辱されていた。



床は冷たかった。



外は、雨が降っていた・・・。






―アイシテル―





其れさえあればこの先一人で生きて行けると思った。










沈黙の雨











強姦された挙句に告白された日から、俺は誰彼構わず寝るようになった。

あの人にも何度脚を広げた事か分かりはしない。

誰かにこの身を貫かれても、もう何も感じなかった。

心が、身体が。本気で感じられるのはあの人の感触だけ。

あの人意外に本気で感じる事など出来なくなっていた。

許されるなら、全てを曝け出してあの人に逃げてしまいたかった。



中一でアバズレってのも笑い話だ。

誘われれば誰でも構わないんだから。

あの人が俺から手を引くまで。あの人の関心が誰かあの人に似合う女へ移行する日まで。

俺は、こうしていようと決めた。

堕ちるなら、俺一人で堕ちようと決めた。

堕ちるなら、俺一人で十分だと思った。

先のあるあの人に。輝かしい未来の在るあの人に、今、俺が応える訳にはいかない。

俺の心がどんなにあの人を求めたくても、あの人を考えればこそ、俺は儚い夢を秘めたこの心を奥底に隠して封じるしかなかった。

報われない想いを引き摺って。多分俺は、二度と恋など出来なくなるだろう。





解ってるんだ





本気で好きなのは俺だって一緒だと云う事くらい。










外は雨が降っていた。



心は嵐が吹いていた。



身体は陵辱されていた。



床は冷たかった。










外は、雨が降っていた・・・。















何度目か分からない行為の後、あの人はいつものように言った。

「愛してるんだ・・・海堂・・・」

「俺は・・・愛してなんか無い・・・」



身体を繋げて、愛を囁かれる度に繰り返される言葉。

嬉しいのに其れを伝える事は無い。

伝えてはいけないから。

好きだからこそ何度も吐き出した言葉。

自分に言い聞かせるように、言い聞かせるように・・・



「いい加減にしないか?」

何故、この人はそんな事を言うのだろう・・・?

「何が・・・ですか・・・」

「何処の世界にそんなに泣きそうな顔しながら言った台詞を信じられる奴が居ると思ってるんだ?」

何故、この人はそんな事だけ敏感に感じ取るのだろう?

「信じる信じないはあんたの勝手だ。だからって俺にまで其れを強要しないで下さい。俺に、何かを求めないで下さい。」

「じゃあ、其の涙は何だ?何でそんなに辛そうに涙を流すんだ?」

これ以上、俺に構わないで・・・

ぽたぽたと。頬を伝わる涙は、まるで外の雨のように何一つ語らず、何一つ見ないフリをしてはくれなかった。

この人が俺に恋心を持つうちは、俺もこの人も、絶対に幸せになんてなれはしないんだ。

俺への想いが無くなれば、この人は幸せな未来を歩けるのに・・・楽になれるのに・・・。

誰かに後ろ指を指される生活など、俺の為にわざわざ選ぶ事など無いんだ・・・。



「俺は・・・あんたを暗闇に引き込みたくない・・・!光の当たらない道に何か行って欲しくない・・・!俺なんかを好きになった事で誰かに笑いものにさせたくねぇ・・・!俺より・・・ずっとずっと似合う女とくっついて・・・いつか俺が好きだった事なんて一瞬の気の迷いだったと思って欲しい・・・!」

ぽたぽたと。頬に伝わる涙のように。

俺は言葉を吐き散らした。想いを、曝け出した。

言い聞かせていたのに、言い聞かせていたのに・・・。

「・・・海堂・・・」

「どんなに望んだってあんたとの証は残せないんだ・・・!」

「海堂・・・もういいよ。もう、いいから、それ以上俺の為に自分を卑下しないで?」

塞き止められない感情を、外の雨のように流れ出る涙を。俺の全てを。

この人の腕は、抱きしめてくれた。

暖かい体温が、心地よい鼓動が、優しい言葉を・・・。

「ねぇ海堂。俺はね、君がいいんだ。海堂薫が欲しいんだ。証なんか要らないから。唯俺の傍に居て?もう、無理に拒絶しなくていいから。俺の為に傷つけなくていいから・・・。」

「先輩・・・」

「君の気持ちが知りたいんだ」

「だって・・・俺・・・もう、汚れて・・・」



そう。



俺は、もう、汚れてるんだ・・・この人に受け容れて貰えるほど綺麗な身体じゃあない。

「大丈夫。今までの事は俺のせいでしょう?だから俺は責めたりしない。責められる訳が無い。寧ろ、責められるべきは俺でしょう?もし、海堂の傷つくような事を言う奴が居たら、辛かったら、言って?いつでも・どんな時でも、俺はどんな手を使っても君を救い出すから。ね?」

「せん・・・ぱい・・・」





強く強く抱き占められる身体。俺も、抱き返したかった。





だから・・・





「・・・俺を奪い取るなら・・・俺の全てを貴方の全てで奪って下さい。」

「わかってる。もう、一人じゃない。」

この人は、震える俺の身体ごと全てを受け容れてくれた。

俺は、この人の全てをこの身全てで受け容れていた。





強く強く。何処までも強く抱き占めて。



強く強く。何時までも強く抱き占めた。










外は雨が降っていた。



瞳は涙を流してた。



唇は優しく触れ合った。



心は底から救われた。



身体は貴方に解放された。










外は雨が あがった















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乾海馴れ初め海堂編です。
其のうち乾も書きます(って書きました)
ちょっと改定版。補足したりしなかったり。

えっと

強姦かよ?!

まさにそんな感じです。久々に読み直して書いても。(自分で書いててやっぱり驚く人)
っていうか、好きだからって強姦した人庇うような子です。うちの姫は。



20020806
今朋 獅治

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