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「不二ごめん…俺、好きな子が出来たんだ…だから…」 ―ワカレテクレナイカナ― 呼び出された先で、僕はそう宣告された。 「そう…」 と言う事しか出来なかったけど、 「最後に、僕をもう一度抱いて…?せめて其れまでは偽りでも恋人で居て…?」 と口を出た言葉を、 「わかったよ。」 と了承してくれた。 「…ありがとう…」 別れのカウントダウン
いつ鳴り響くか知れないレクイエム(音楽) ポケットの中の薬を、使わないで済む日々は、 今 音も立てずに終わった。 幸せの薬〜幸せへのカウントダウン〜 君の言葉は別れの宣告。 居るかどうか知らない神(もの)より、深く強く君を崇拝していたから。 其の君に必要とされないなら、此処に居る理由なんて、もう、僕には無い。 だから僕の神様。どうかサイゴに貴方の温もりを。 「今度の日曜日、家に誰も居ないんだ。」 其れがサイゴになるのだから。其れまではせめて、僕のもので居てよ…。 抱きついた僕を、神様は拒否したりはしなかった。 優しく優しく抱きとめてくれた。 博愛主義の神様は、慈悲深く僕を抱きとめた。 残酷な愛情だと、強く抱きしめた君を、愛しすぎて深く憎んだ。 ねえ、如何して君に、君の心を揺り動かす相手が現れてしまったのだろう? ねぇ、如何して君が、君から突き放す奴の肩を優しく抱くのだろう? いっそ冷たく突き放してくれれば、壊れる心を繋ぎとめられるのに…。 泣いて縋れば。君に甘えたら。僕が女だったら…? コンナ思いに、捕り憑かれる事は無かったのだろうか? 愛した神様を想って カウントダウンは始まった ・・・3・・・
ピンポーン 無機質に鳴り響くチャイムの音。 僕の他に誰も居ない家に、一層非道く鳴り響く。 其れは、僕に対するレクイエム。 「ああ河村。いらっしゃい。」 不自然じゃなく笑えたかな? だって、幸せになるのだから。これから、君も・僕も ポケットに入ってるのは、幸せの薬。 君に少し迷惑がかかるかもしれないけど、其れは許して欲しい。 だって、お相子でしょう?ね? 「入って。今日は誰も帰ってこないから。それに、抱いてくれるまでは、恋人でしょう?」 そうやって言えば、君は苦笑いをする。 「早速だけどしよう?」 そう言っていつも以上に強引に誘うと、 「ごめんね…不二…。」 ときつく抱きしめられた。 「な…!?」 如何して…?如何して優しくするの?如何して抱きしめるの?勘違いさせないでよ…。 「抱くまでは恋人同士なんだろ?だから、俺が不二を部屋まで連れてくよ。」 膝と脇の下に手を入れられ、軽々と持ち上げられる。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。 「不二、首に手を回してこっちに体重かけてくれる?」 言われるままに手を回して体重をかける。 「重くない?大丈夫?」 と問えば、 「不二は軽すぎだよ。魚の入った箱よりずっと。」 と言われた。 「そっか…。」 としか言えなくて 「うん。そうだよ。」 とかえされた後の 「ずっと持ってられる…」 なんて台詞は、とても卑怯だと想った。 ねぇ、貴方からは見えないでしょう?今の僕の顔。其の言葉が嬉しくて、 ずっとこのままでいたくて涙が溢れそうな僕の顔なんか。 こんな、僕らしくないの…。 何処に行ったんだろう?皆が恐れる僕は? 名声や欲しいものを何でも手に入れてきたのに、如何して君だけはままならないんだろう? かちゃり という音と共に、ほんの少しの幸せな時間は終わった。 部屋に着いて、僕は優しく其の腕から下ろされた。 ・・・2・・・
お互いに背を向け合って脱ぐ。 君は震える手で優しく脱がしてくれてたのにね?もう、そんな事もしてくれないんだね。 寂しいと想った。 もう、僕の為にはだける事なんて無いんだと。そう、思うことが悲しかった ちらりと振り向いた先にいる君をしっかり目に焼き付けた。 僕なんかと違って、がっしりとした肩も、其の引き締まった筋肉質な身体も。 彼の持つ全てのものが愛しくて。 泣きそうになるのをこらえて。僕はまた、彼に背を向けた。 そしてこっそりとポケットをまさぐって、僕は薬を一粒手に出した。 「何してるの?不二。」 後から声を掛けられた。 本当はね、全てを君に話して、引き止めてもらいたかった。 だって、責任を感じた君を僕の元に縛り付けられたかもしれないでしょう? でも、そんな事言えないから。 僕のサイゴのプライドだから。 僕という足枷で、神様を縛り付けたくなかった。 「幸せになる準備をしてるんだよ。」 「?!」 如何して…? 何故そんな悲しそうな顔するの? 何故そんな悔しそうな顔…するの…? ねぇ、そんな顔しないでよ…未練が残ってしまうから… 言えない言葉と一緒に、僕は其の薬を飲み込んだ。 ・・・1・・・
河村からキスをしてきた。 触れるだけのキスは、それでも僕を高めてくれる。 幸せの薬はあと少しで効いてしまう。 早くしなければ想い出は残す事が出来なくなってしまう。 愛し愛された記憶を永遠のものにする為の。 彼の前で僕は自分の後ろを解した。だって、早くしなきゃ時間は余り残されて無いから。 彼にしてもらうの好きだけど、優しい彼は、僕の中を傷つけないように、 とても丁寧に扱うから時間がかかってしまう。 とはいえ本当はシテ欲しい処でもあるけど、もう無理。一人でも案外感じられて…。 「…ん…か…わ…むらぁ…!」 自然と溢れてくる甘く濡れたような声は、彼を興奮させるには丁度善かったらしい。 「不二…」 緩くなった所に、僕は自分から彼を宛がった。 「不二!?」 「河村…もう、挿入れてくれても大丈夫だから…僕、もう力が入らないんだ…」 力が入らないのが薬のせいなのか快楽のせいなのかはよく判らない処だけど、 僕の痴態を観て、彼が大きくなってるのなんて知ってた。だからこそお願いしたんだ。 残された時間は、あと少し。 早くしてくれなきゃ。最後の想いでなんか残らない。 「んっ…あぁっっ…!!」 僕の指なんかとは比べ物にならない程の質量を持ったモノが侵入してきた。 「辛くない?不二…。」 耳元で彼が僕の身体を気遣うから。 「いい…!いいから…もっと…激しくして…!!」 と、其の響く声により一層身体は欲情していた。 「もう…停まれないから…」 荒くなった呼吸で、悲鳴のような僕の願いを、彼は聞き入れてくれた。 ずっずっ・と何度と無く抜き差し入れられて。 其の激しさと反比例するように僕の何処かが冷静になっていく。 残り時間はもう僅か。 「…もう…だめ…!!」 ・・・0・・・
僕の意識は真っ白な世界へと旅立っていった。 ありがとう…僕の神様… 其れが、僕の最期の遺言(ことば) ++++++++++ + ++++++++++
「不二ごめん…俺、好きな子が出来たんだ…だから…」 ―ワカレテクレナイカナ― 呼び出した先で、俺はそう宣告した。 「そう…」 と言った後に 「最後に、僕をもう一度抱いて…?せめて其れまでは偽りでも恋人で居て…?」 と放たれた言葉に 「わかったよ。」 と嬉々として了承した。 「…ありがとう…」 其れは、俺の言葉だというのに…。 居るかどうか知らない天使(もの)より、深く強く君に魅了されていたから。 其の君に釣り合わなくて、全く自信の無い俺は、君の傍に入られない。 だから僕の天使。どうかサイゴに貴方の温もりを。 「今度の日曜日、家に誰も居ないんだ。」 其れがサイゴになるのだったら。其れまではせめて、俺のもので居て欲しかった…。 抱きついてきた天使を受け止める事を、拒否されたりはしなかった。 だから優しく優しく抱きとめた。 博愛主義の天使は、其れは可憐に俺に抱きついてきた。 今、こうして天使が俺に縋ってくれて、本当は死ぬ程嬉しくて。 でも、俺の想いは君の足枷になってしまうから… その気持ちは奥の奥で、箱にしまって厳重に鍵をかけたんだ。 日曜日。 俺は彼の家を訪れた。 この日を待ちわびながら。この日に怯えながら。 震える指で押したチャイムの音。悲しみのレクイエムに聴こえた。 「ああ河村。いらっしゃい。」 綺麗な笑顔に出迎えられた苛立ち。幸せになるというのに。これから、君も・俺も 「入って。今日は誰も帰ってこないから。それに、抱いてくれるまでは、恋人でしょう?」 そうやって言われて、苦笑いした。これが最後だとわかってるから。 「早速だけどしよう?」 そういつも以上に強引に誘われて 「ごめんね…不二…。」 ときつく抱きしめた。 「な…!?」 卑怯でごめん。 「抱くまでは恋人同士なんだろ?だから、俺が不二を部屋まで連れてくよ。」 膝と脇の下に手を入れて、軽々と持ち上げる。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。 「不二、首に手を回してこっちに体重かけてくれる?」 言われるままに手を回して体重をかけてくれる。 「重くない?大丈夫?」 俺は吃驚していた。ずっと、軽いと知っていたけど、こんなに軽くは無かったから。 「不二は軽すぎだよ。魚の入った箱よりずっと。」 不二を抱き上げた時の其の軽さ。 「そっか…。」 と呟く君に 「うん。そうだよ。」 とかえした。 「ずっと持ってられる…」 其れが本音だから。 ねぇ、君からは見えないだろう?今の俺の顔。この腕の中にいる君の重さが嬉しくて。 ずっとこのままでいたくて。 其れなのに君に嘘までついた自分に、自分の言葉を受け入れた君に醜悪な顔した俺なんか。 全く持って自分勝手な精神が嫌に為る。 そんな俺が、これ以上不二と一緒に居る自信なんて無かった。 一緒に幸せになる自信が無かった。 だからあの時、呼び出した。 だからあの時、嘘をついた。 俺の傍に引き止めたくて仕方なかったのに。 辛いのに、俺のこの口はべらべらとよく回った。 好きな子なんか、一生涯君だけだと、言ってしまえば楽になれただろうか? 俺は周りと戦えた? 不二と一つで在り続けられた? かちゃり という音と共に、ほんの少しの幸せな時間は終わった。 部屋に着いて、俺は優しくこの腕から下ろした。 お互いに背を向け合って服を脱いだ。 震える手で、一生懸命に脱がしていたのはもう随分と遠い気がした。 俺は取り合えず上だけを脱いで後ろを振り返った。 不二の背中を、こうしてみるのは初めてかもしれない。 やっぱり俺なんかと違って繊細でキレイ。 この先、不二ほどの人なんて現れない。現れたって好きにならない。 不二の前に簡単に俺より善い奴が現れて、俺は醜い嫉妬をするのだろう。 ―それは俺のものなのに…― と…。 でも不二を解放して、俺は幸せになるんだ。不二にはもっと幸せになってもらうんだ。 例え矛盾していても其れは心からの言葉。 伝える事は出来ないけど、でも俺はずっとそう願う。 ふと見ると不二がポケットをごそごそし始めた。 不思議でしょうがなくて、 「何してるの?不二。」 と聞いたら、不二は 「幸せになる準備をしてるんだよ」 ととてもキレイな笑顔を浮かべて答えた。 少しの罪悪感とたくさんの嫉妬心。 そんな事を思ってはいけないのに。俺から別れを切り出したのに なんて俺は醜いんだろう? 自分からキスをしかけた。 最後に、求めたのは俺からだった。 情事の後の乱れた呼吸。 是が最後なのだからと自分にそう言い聞かせて、激しく彼を求めた。 ふと。 そう、ふと気になった。 俺の心臓はまだばくばく言っている。 呼吸も荒く乱れたままだ。 受け容れる側の不二はもっと乱れてる筈じゃないのかな? 俺の腹の上で呼吸も乱さずに眼を閉じている不二。 「ふ…じ…?」 呼ぶ声が震える。不二を抱きしめながら俺は腹に力を込めて起き上がった。 腕の力を緩めると、不二の細い身体は、支えを失ってふらりと倒れそうになった。 すんでの所で抱きかかえたものの、追いつかない思考に軽くパニックを起こしかけていた。 だって、訳が分からないよ。どうして?どうして不二は動かないの? 嫌な予感がする。 身体を重ねる前、不二は何かしていなかったか? ああそうだ。服のポケット。ポケットから何かを取り出していた。 静かに不二をベッドに横たえて、俺は不二の服を探った。 右のポケットには、一つだけ使用された薬が入っていた。 其れが何の薬なのか俺にはよく分からないけれど。 ただ何となく、残った其の薬を、全部飲んでしまおうと思った。 急激な眠気に襲われて、このまま身を任してしまおうかとも思ったけど、 最後の力を振り絞って、何とか不二の眠るベッドまで行くことが出来た。 不二と向き合い、包むように抱いてそのまま俺は深い深い眠りについた。 おやすみ。俺の天使。 ++++++++++ + ++++++++++
不二がタカさんに振られたって話したとき、俺は嫌な予感がしたんだ。
なんでか良くわからないけど、とにかくそんな気がした。 「今度の日曜、サイゴにタカさんに抱いてもらうんだ。其れでオシマイ。」 そんな悲しいことをおどけた口調でいわないで? ねぇ、不二?不二はどうしたかった? 俺は何が出来た? 形の無い、言いようの無い不安はどうしたら拭えた? そして今日が其の日。 俺は大石の家に行った。怖くて仕方なかったから。 大石の傍に居たからって、事が善い方に運ぶわけじゃない。 それでも一人では抱えていられなかった。 だからって、不二がふられたなんて、そう簡単に誰かに話していいことじゃない。 交錯する思考に、ついていけるだけの知恵なんて無いから。 だから大石の優しさに逃げたかった。 何も言わなくても、大石は俺を責めたりしないって知ってるから。 きっと大石は自分を責めるんだ。『英二が頼れないような自分が悪いんだよ』って。 俺はずるくて卑怯なんだ。 だからお願い・・・。 未だ自分のうちに抱えてられるうちは、あなたの其の優しさに甘えさせて? そうやって黙ったまま。時間が刻々と経っていく。 悪いほうに向かって行っている気がするのは間違いなんかじゃない。 だけど、言ってしまうのが怖い。 俺達も終わっちゃう気がして・・・ そんなこと無いって信じてるのに。 「英二・・・?」 だから俺は其の呼びかけには応じれなかった。 「英二・・・?」 突然俺のうちに押しかけてきた英二は、酷く挙動不審になっていた。 何があったんだ? と聞いても、ただ首を横に振るだけ。 俺は、まだ、英二似頼ってもらうには足りないのか? と、少し心が痛かった。 英二が辛そうな時にそんな事を思う自分が嫌だった。 沈黙が続いた。 そんな事、いつもならありえない。 「ねぇ大石!」 そう言って、絶対間を作ろうとしない英二が、今日は一言もしゃべらない。 突然英二は震えだした。 「おぉいし・・・!!」 今日始めて発声したのは俺の名前で。悲鳴のように何度も何度も呼び続ける。 「どうしたの?英二?言ってくれなきゃわからないよ?」 そう優しく抱いて宥めれば宥めるほど、 英二は其の大きな瞳からぽろぽろと涙をこぼしていく。 「おぉいしぃ・・・おお・・・いしぃ・・・」 何度も何度も呼び続けて、英二は泣きつかれたのか こてんと俺の肩に頭を預けて寝てしまった。 英二は眼を覚ますと、事のあらましを教えてくれた。 「ごめんなさい・・・!ごめんなさい!!」 そう何度も何度も謝りながら。 「いいよ。ありがとう。辛かっただろう?よく一人で耐えてたね、英二。」 そういったら、 「おぉいしぃ〜」 とまた泣き出してしまった。 「英二、泣いてもいいから、今は早く二人の元へ!」 そういって英二の手をとってすぐに不二の家へと走り出した。 こんなに全力疾走するのは乾の野菜汁以来だと、そんな悠長なこと思っている暇もなく、 ただ、一刻も早く二人の場所へと急いだ。 何事も無く二人が別れていれば善い。 でも、不二が怖い。いつか言った言葉が怖い。 「もし僕が、タカさんと離れるような事が有ったら、僕は迷わずこれを飲むよ。」 といって、ポケットから薬を出した。 「それは?」 と聞いたら 「幸せの薬。」 と酷く悲しそうに、酷く綺麗に笑った。 かちゃり。 其の部屋は白くて綺麗だった。 ベッドには不二とタカさんがベッドを乱すことなく横たわっていた。 あんまりにも綺麗で俺は涙がこぼれた。 「ねぇ・・・ふじ?・・・たか・・・さん?」 「英二・・・」 「どうして?!!」 どうして?どうして・・・?! どうして二人ともゆすっても何の反応も示してくれないの? タカさんの腕はピクリとも動かない。 全てから不二を守るように動かなくなった其の腕に、羨ましさすら感じた。 「どうしてだよ!!!!!!」 「もう、いい。もういいから・・・」 大石は俺の眼を其の手で覆い隠した。 溢れる涙は大石の腕を濡らした。 俺は其処で意識を失った。 白い白い思いは。
白い白い部屋で。 無へと無へと・・・二人を導く。 幸せの薬は、 もう、残ってはいない。 ++++++++++ + ++++++++++ なんとなく綺麗な感じの文章が書きたくなったんですね。 意味も無くタカフジの悲恋系の痛い話が書きたくなったんですね。 改訂版を書きながらやっぱり何で裏にあるのか私も善く分からないんですね。 事故とかじゃなくて自殺だからなのか?自分・・・。 なんにしても皆さん如何でしたか? 泣いていただけちゃうと、してやったりってかんじなんですね。 20020816 今朋 獅治 禁 無断転載 |