抱えてるモノは異質。
抱いている彼は懐疑
共通点が無い共通点。
幸先の悪い見通しと、刷り込み式の恋慕。

欲しいのは、温もりか?
生温い温度は、生かさず殺さず。

何かに当てた、汚水に浸された文字無き言葉の欠片は、いつまでも宛先を探していた。





白紙の返信





寂しさを紛らわす方法は一つではない。
抱いてもらうことも、抱く事も。
刹那的に掻き消す事は出来る。
嘘で塗り固められて、誰かに出会って更に頑強になって自分を覆う壁。
壊す事の出来る人なぞ、ついぞ現れはしなかった。
破壊されない壁の中、浸水していく待ちわびた時は、彼を溺れ殺せるほどに溜まっていく。
手には、それでも手放せない手紙を握り締めたまま。

壁を、破壊する事は叶わなくても侵入を許された人間は居た。
同じ匂いのする人を。
招き入れたのは、彼自身。





「ねぇ手塚、今日は暇?」
「取り立て用事は無いが。」
「ならさ、来てよ、空っぽなんだ。」
「満たしてはやれんぞ。」
「分かってるさ」

電話越しでのやり取りは上々。
いつだって傷口を嘗め合う関係だ。それ以上の気持ちはお互いに持ち合わせていない。
同調したのは向こうで、引きずり込んだのは自分だ。
離れられてしまえば、寂しいのは同じだ。
いつだって、ぎりぎりの境界線上を歩いているのだ。

無機質に響くのは、機械だけで善い。

「いらっしゃい、手塚。早かったね。」
「出掛けの用事がある祖父がついでに送ってくれた。」
「家出見たいな荷物だね?」
「コレで最後だ」
「もう、いつでも其の身一つでこれる」
「そうさせたのはお前だ。」
「分かってる。」
「なら、いい。」
「分かってるさ・・・。」

絡むのは心に支配された体か。
若しくは、背徳的な甘美のせいか?

「こんな事してたら彼女に怒られる?」
「怒る女も居ないだろう。」
「何?女に触れられるのは嫌?潔癖症」
「違う」
「じゃあ不感症」
「十分過敏だ」
「心は動かないくせに」
「同じ穴の狢が」
「今日はどっち?」
「満たしたいのはお前だろう。」
「じゃあ丁重にお出迎え。明日はきっと泥だよ泥。」

額が掠る。唇の接触は後僅か。
肩に回る腕は、だらしなく伸びる。
何を掴むでもなく虚空を切る手。

不意ふちに引き寄せた身体。
瞬間のキス。

「ねぇ女王様、手加減居る?」
「いらん」
「あ、そう?」
「ああ。」

不機嫌なフリした、結局自分に甘い王様。
自分は、甘いフリして優しさなんか持ち合わせてない。

彼を、壊したい衝動。
唯一の、負すらも許容してくれる存在。
喪ってしまえば、自分も永く生きらえないで済む。
黒に飲み込まれて。

空っぽの心に、重苦しい自分の負だけが蓄積される。
窒息しそうだ。
二酸化炭素を肺一杯にして。
酸素を失った二酸化炭素だけの世界に行けば、こんな想いなのかも知れない。



嫌な白昼夢だ。



「荷物そこらにほっぽって、おいでよ。」
「お前の部屋は遠慮する。」
「じゃあ客間で。豪華な客布団も明日はクリーニングだ。」
「汚すのは俺でも汚させるのはお前だ。」

「オールオッケ。気にしなくて善いよ。」
「無論、気に等留めない。」
「上等。」

たどり着いた部屋の前。
境界線の扉。

これ以上の侵食を拒否して欲しい。
外に居れば、同調は終わって、君は僕を見なくなる。
全てに拒否されて。
それ以上の壁の建造は無くなって、俺は溺れ死ねるから。

悪のデリートボタンは、君の其の行動。



嗚呼・・・





躊躇無く足を踏み入れた綺麗に片された部屋。
彼もこれ位自分の部屋を片せば善いのに。
そう思わずに居られない。
「何?如何したの?」
「相変わらず、お前の部屋と天地の差があるな。この部屋は・・・」
「気にしたら負けだよ。ねぇ、女王様。」

強引な腕に引かれて導かれるのは華美な布団の上。
性急な愛撫に感じる自分。
ただ、舌を這わせてるだけだと分かってるのに。声が漏れる。

「・・・ん・・だ・・・から、敏感だと・・・言った・・・」
「本当にね・・・ねぇ、ココも感じる?」
急に柔らかな舌の動きになる。
「そ・・・んなとこと・・・!」
「固くなってきたね、手塚の乳首。」
「や・・!」
やめろと言う声は続かなかった。
「やめて欲しいの?ココ、こんなに固くして?」
腕の抵抗は弱々しかった。
「もう、手塚のペニスもぐちゃぐちゃだよ?」
追いつかない思考。
「如何する?ココも、嘗めて欲しい?」
先走る快感。
「ああ、でも。」
「んあ!」
「こっち、ほぐしとかなきゃね?」
弄られる後腔。ほんの僅かに蠢く指に翻弄。
「いぬ・・・い・・・」
「如何したの?クニミツ。」
「もう、いい・・・もうどこも触れなくていいから・・・!」
「快感が強すぎる?ねぇ、乳首転がされて、ペニス弄られて、アナル蠢かされて?」
「やぁ・・・っ!」
「いいよ、挿れてあげるよ、女王様」

深々と挿れられて行くモノを感じた。
浸りきれない幸せと、間もなく息もつけない程に浸る暗然。



眩暈がする



もう、何を口走ったのか覚えても居ない。
ただ、涙が毀れた。
それが、何を暗示する涙なのか。
きっと、解っている。





ひやりとした感覚に眼が覚めた。
「おはよう、手塚。よく寝てたよ。」
そう言いながら身体を拭いてくれていた。
自分で拭こうと思って手を伸ばしてはみたものの身体は、自力で動かす事は不可能だった。
ただ、優しく、汚れをふき取っていく。

「乾。」
「何?」
「苦しいのかも知れんが、我慢しろ。」
「手塚・・・?」
「お前を、壊せない。俺は。」
「解ってる・・・」
「できる事は、握った手を離してお前を溺れ死にさせる事だけだ。」
「其れでいい。手塚はそこに居てくれるだけどいいよ」
「お前の壁を壊して、其の手に持ってる手紙を受け取るやつは、きっと、現れる」

「だけど!」

「だから・だ。いつか誰かの為に、お前が死ぬ事は許さん。」
暗涙させているのかもしれない。自分の前で泣いてくれとは言えない。
俺が泣けば、其の水も、追い詰めると知っているのに。
それでも自分は、毅然とした表情で。累々と涙を毀し続けた。
彼は、綺麗な顔をゆがめて、声を殺して泣いていた。
上から降ってくる涙で、少しでも彼の浸かっている水が減ればいいと思う。




















また、罪悪感と絶望感で肺に水が溜まっていく。

窒息死まであと少し

もう、息も絶え絶えだ。

白紙の手紙は、未だに宛先を探している。


















































そして時が過ぎて、











真っ白な手紙を受け取った君の返信は、真っ白な心だった













































20030818
今朋 獅治

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