私の涙が渇くころ あの子が、泣いている。










When someone's wish is realized.






夕暮れていた。朱色の空と鴇色の雲が、私に暗い影を落とすほどに。











「精市は元気そうだったか?」

見舞いに往くと言って帰った弦一郎を、彼の家の向かい、自分の家で待ち伏せた。
鬱々と聞くのも性に合わないと自覚してる自分は、殊更何も無いを装ってたずねた。

「術後の経過は順調だそうだ。健康ではないがな。努めて明るい。何時も通りだ」
「そうか、ならば良かった」
「気になるのなら、蓮二。お前も行けば良いだろう。幸村も会いたがっていた」
「そうだな、弦一郎」



その言の葉の裏側は。殊更何も無いを装った。



いつだって私は、平気で誤魔化せるのだ。微動だにせず流々と誤魔化す。
自分の想いも、願いも、誰かの想いも、願いも。
其れが、『誰か』を疵付ける事になろうとも、そうせずにはいられなかった。

今までは、そうして自分すらも疵付いて泣いてしまえば、それが正当だと自分を誤魔化せた。





でも、そろそろ、『誰か』の願いを、叶えなくてはならないのだと想う。

既に、自分すらも、誤魔化すのが苦しくなってしまったのだ。





「弦一郎、そのうち私も見舞いに行くよ。」
「そうか!きっと幸村も悦ぶだろう、」
「弦一郎、行くならば、私独りで行く」
「蓮二・・・?」
「私独りで行かなければ為らないんだ・・・」





だから私は一人で行かねば為らないのだ。



せめて、『弦一郎』の願いを叶える為にも。


















































next--+

20040918